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H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その32:
定言的とは無条件のこと

カントが考える理性は、道徳にかかわる実践理性は、功利主義者が考えるような道具としての理性ではなく、「いっさいの経験的目的にとらわれずに、ア・プリオリに法則を定める純粋実践理性」です。

では理性はどのようにしてそれを行うのでしょうか。サンデルの解説によると、カントは理性が意志を規定する方法として、2つの方法(2種類の命法)を提示していると言います。

1つは仮言命法で、理性を道具として用いる方法で、功利主義者の理性の捉え方に重なります。Xが欲しいならば、Yをせよ。善い人に見られたければ、善行を積むべし、ということです。

カントは、条件をつねに伴う仮言命法を、条件をいっさい持たない定言命法と対比させます。

「もしその行為が、別の何かの手段としてのみ善いのであれば、その命法は仮言的(hypothetical)だ。もしその行為がそれ自体おいて善く、理性と一致している意志にとっても必要なものであるなら、その命法は定言的(categorical)だ。」

カントの言う「定言的」とは無条件のことです。「行動の実質や予測される結果ではなく、行動の形式と、行動を生じさせる原理とにかかわっています。その行動に含まれる本質的な善は、行動の結果がどうあれ、つねにその心的傾向に存する。定言命法だけが道徳の命法たる資格を持つ」とカントは言っています。

道徳、自由、理性の関係で言えば、自律的自由を実践するためには、仮言命法ではなく定言命法に従う必要があるのです。

定言命法とは何か?何を命じているのでしょうか。

カントは「ほかの動機をともなわずに、それ自体として絶対的に適用される実践的な法則という考え方を適用すれば、この問いに答えられる」とカントは言います。

サンデルの解説では、カントは定言命法について、いつかの表現で定式化しているそうです。

1つ目は、カントが普遍的法則と呼ぶもので、「汝の意志の格律が、つねに同時に普遍法則となるように行為せよ」というものです。カントのいう「格律」とは、行動の理由となる規則や原理のことで、万人に当てはめても矛盾が生じないような原則のみに従うように求めています。

サンデルは分かりやすい例として、お金を借りる際、すぐに返せないのに、すぐに返すと嘘の約束をすることは、道徳的に許されるのか、という例をあげます。当然、カントの答えは否です。同じことを万人に当てはめた場合、約束というものが成り立たなくなり、社会規範が損なわれるからです。

功利主義を擁護する立場をとったジョン・スチュアート・ミルは、この例に対して「それは結果論的な議論になる」と批判しましたが、サンデルの解説によると、ミルは、カントの論点を誤解しており、カントの考えでは「自分の格律を万人にあてはめ、かつ自分もその格律に従って行動し続けられるどうかを考えることは、それがもたらす結果を予測するための方法ではなく、自分の格律は定言命法と一致しているかどうかを知るための試験だ」ということです。

次回も、定言命法の続きを、サンデルの解説で見ていきます。

(by インディーロム 渡邉修也)

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