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H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その21:
道徳をめぐる考察

「正義と不正義、平等と不平等、個人の権利と公共の利益が対立する領域で、進むべき道を見つけ出すにはどうしたらいいのだろうか。」

サンデルの『これからの正義の話をしよう』は、こうした問いに答えようとするものです。

前回のトロッコ問題では、最初の事例では待避線の方へレバーを引くことに躊躇しなかった学生たちが、男を橋から突き落とすことにはより強い抵抗感を感じるようになるという話を紹介しました。

躊躇し、葛藤に直面すること。新たな状況に出会って、自分の判断と原則のあいだを行きつ戻りつし、たがいを参照しつつ判断や原則を修正すること。

サンデルは、この心の動き、つまり行動の世界から理性の領域へ移り、そしてまた戻る動きの中にこそ道徳についての考察が存在するのだと言います。

そして、特定の状況に関する判断と、熟考のうえで支持している原則とのあいだの弁証法的相克。

道徳に関するこうした議論の進め方には長い伝統があり、ソクラテスの対話術、アリストテレスの道徳哲学までさかのぼることが出来るが、次の問いかけには決着がついていないと、サンデルは言います。

「道徳についての考察が、自分の下す判断と支持する原則の一致を追求することだとすれば、そうした考察はいかにしてわれわれを正義、つまり道徳的真理へ導くのだろうか。」

サンデルは、その答えは「道徳をめぐる考察は孤独な作業ではなく、社会全体で取り組むべき試みなのだ」と言います。

「われわれは内省だけによって正義の意味や最善の生き方を発見することは出来ない。」

サンデルは、プラトンの『国家』の中で、ソクラテスが一般市民について洞窟に閉じ込められた囚人になぞらえ、囚人は壁に揺らぐ影を見ていて、対象の反射しか感知できていないが、哲学者は洞窟の外に出ることで、現実に存在する物を見ることができる、という真理探究における哲学者の優位性の話を紹介しつつ、「洞窟の声にも聞くべきところがある」、「壁の影を無視する哲学は、不毛のユートピアを生み出すにすぎない」と一般市民の意見や信念に耳を傾けるべきだ言います。

サンデルは、一般市民つまり社会全体で道徳について考えていくために、また、正義に関する自分自身の見解を批判的に検討するために、まずは古代から現代までの政治哲学者たち(アリストテレス、カント、ミル、ロールズなど)がどのように考えきたのか、耳を傾けてみようと提案します。

次回は、功利主義に関するサンデルの解説です。

(by インディーロム 渡邉修也)

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