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H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その20:
トロッコ問題

正義の理論の評価を試みる前に「哲学的議論がいかにして進むのか」を問うこと。

サンデルの『これからの正義の話をしよう』で、最初に読者に投げかけられる問いは、有名なトロッコ問題をどう捉えるか、ということです。

トロッコ問題については、色んな人が解説をしているのでご存知の方も多いと思いますが、以下のような状況の時、あなたならどのように考え行動するのか、という思考実験です。

<トロッコ問題>
制御不能になったトロッコが猛スピードで走っている。疾走するトロッコの先には、線路工事中の作業員が5人いる。線路には分岐(待避線)があり、運転士のあなたがレバーを引けば、5人の命は救われる。しかし、待避線には1人の作業員いる。運転士のあなたはどうしますか?

果たして、皆さんはどのように考え、どのような行動(この場合、レバーを引くか引かないか)をされるでしょうか。

5人の犠牲よりも1人の犠牲を選ぶ。これは、典型的な功利主義(ベンサムやミル)で「最大多数の最大幸福」という価値基準でものごとを判断していこうとするものです。

一方、レバーを引かないという選択をする人もいます。自らレバーを引くことは人の命を奪う行為をするということであり、人を殺してはならない、という倫理に反するから、という理由です。この考えは “行為そのものの道徳性” を問うたカントの義務論として解説されることが多いものです。

このトロッコ問題では、状況に対して、関与する(行動を起こす)べきかとということと、判断基準に「数」を持ち込むかどうか?ということが問われています。

サンデルは続けて次のように問い掛けます。

同じように制御不能のトロッコが猛スピード迫っている。あなたは跨線橋の上にいる。線路にはやはり5人の作業員がいて、このままでは5人は轢死してしまう。ふと横を見ると太った男が手すりから身を乗り出して線路を見下ろしている。あなたは体重が軽く線路に飛び降りてもトロッコを止めることが出来ないが、この太った男を突き落とせばトロッコは止まり、5人は助かるかもしれない。だが、太った男は死んでしまうだろう。

5人か1人という条件は一緒です。サンデルの大学の授業では、最初の待避線の問題では、多くの学生がレバーを引き5人を助ける方を選ぶのに対して、後の題題の方は、太った男を突き落とし5人を助けるという選択を躊躇する学生が多くなるそうです。

レバーを引くことも男を突き落とすこともどちらも「自らの行為」であることは変わりないはずなのにです。

サンデルは、「躊躇」の感覚からスタートし、2つの行為の違いはどういうことなのか、論理的に考えていくことが大切だと言います。

「ときにわれわれは、道徳的な論証を他人を説得する方法だと考えることがある。だがそれは、自分自身の道徳的信念を整理し、自分が何を、またどうして信じるのかを理解する方法でもあるのだ。」

次回も、サンデルの『これからの正義の話をしよう』を読み進めていきます。

(by インディーロム 渡邉修也)

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