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H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その19:
サンデルのジャスティス

去年の4月から開始した連載「正義とは?」ですが、当初は数回で済ませようと思っていたロールズの『正義論』に手こずり、気づけば、半年以上も費やしておりました。個人的にはこれからも『正義論』は読み続けていこうと思いますが、メルマガの読者の皆さんにお付き合いいただくものなんなので、年明けということもあり、次の本、マイケル・サンデルの『これからの正義の話をしよう いまを生き延びるための哲学(原題:JUSTICE What's the Right Thing to Do ?)』へ進もうと思います。

サンデルは、ロールズの『正義論』への批判を行った論客の一人としても有名ですが、真っ向から反対というわけではなく、ロールズの『正義論』に不足している視点を指摘し、「正義」や「公正」、そして「平等」に関する議論をより発展させ深めていこうとする立場です。

サンデルの主な批判点は、ロールズは財の分配の公正について論じているが、実際の社会ではその社会が辿ってきた固有の文脈(価値館など)があり、善に関する共有認識も社会によって異なるので、ロールズのような抽象的な公正論だけでは済まないはずだ、というものです。

最初にお伝えしておくと、サンデルは、正しい正義の在り方についての結論は出せないとしています。それは、社会(=共同体)ごとに善の共通認識が異なるから、という理由です。

しかし、サンデルは、それでも、それだからこそ正義について私たちはどのように考え議論していくべきか、前提となる基本的な視点、論点を知っておく必要があると言っています。

サンデルはロールズの成果を踏まえた上で、価値あるものの分配にアプローチするための3つの観点として「幸福の最大化」「自由の尊重」「美徳の涵養」をあげ、それらが主張することや問題点などを具体的な事例を交えながら語っていきます。

「幸福の最大化」とは、「最大多数の最大幸福」を追求する功利主義のアプローチです。

「自由の尊重」は、小さな政府、規制緩和、自由放任を主張し、自由市場を信奉するリバタリアニズム(自由至上主義)のアプローチ。

最後の「美徳の涵養」は、サンデルがこの本の中で提示し、議論を喚起しようとするアプローチになります。

サンデルは、美徳論は文化的保守派や宗教的右派と結びつくことが多く、道徳が法制化されることは自由を制限し不寛容や弾圧を招く恐れがあるとして注意を喚起していますが、その一方で、公正な社会ではある種の美徳や善良な生活の概念が肯定されるという考え方や、イデオロギーの枠を超えて政治的な運動や議論に刺激を与えてきたとして、その有用性に着目しています。

そして「正義の理論の評価を試みる前に、哲学的議論がいかにして進むのかを問うことが大切」として、サンデルはこの本の第1章「正しいことをする」の中で「われわれはどのくらい正確に、具体的状況についての判断からあらゆる状況に適用すべきと信じる正義の原理を導き出せるのだろうか。要するに、道徳的な推論とはどんなものだろうか」と最初の問いかけを行います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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