アンケートメーカー

H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その15:
矯正原理と格差原理

「<二原理が平等主義的な正義の構想のひとつを表明している>とはどのような意味においてなのか」

ロールズは、この点を説明することで第二章を締めくくっています。

「矯正(正義回復)原理によって持ち出される複数の考慮事項に対して、それぞれの相対的重要性を格差原理が割り振る」ということがまず指摘できると言います。

矯正原理とは、不当な(=受諾に値しない)不平等は矯正を必要とするという原理です。

「生まれの不平等と自然本性的な[才能や資産の]賦存の不平等は不当なものであるため、なんらかの仕方で補填されなければならない。したがって、あらゆる人を平等に扱い、正真正銘の機会均等を提供するためには、生まれつきの資産が過少な人びとや恵まれない社会的地位に生まれ落ちた人びとに対して、社会がもっと注意と配慮を払わなければならない、と矯正原理は主張する。」

「偶発姓の偏りを平等の方向へと矯正するというのが、その理念である。この原理を追求していくならば、少なくとも人生の一定期間にわたり、高い知能の生徒よりも知能にそれほど恵まれなかった生徒の教育に対して、より多大の資源が費やされることになるだろう。」

このように、矯正原理がいかに社会にとって重要な役割を果たしているのか語りつつ、ロールズは格差原理と矯正原理との関係について解説を進めていきます。

「格差原理はもちろん矯正原理と同じものではない。あたかも全員が同一のレースを公正な基盤に基づいて競い合うことが予期されているかのように、もろもろのハンディキャップ(不利な条件)を解消する試み、格差原理が社会に要求することはない。」

「だが、格差原理は、もっとも恵まれない人びとの長期的な予期を改善するべく、たとえば教育に諸資源を配分するだろう。」

「教育の価値は経済の効率や社会(全体)の福祉という観点からのみ評価されるべきではない」、「自分が帰属する社会の文化の享受および社会の運営への参画を可能にし、それを通じて各個人におのれの価値に関する確固とした感覚を与えるという役割は、効率や福祉よりも重要だとまでは言わないにせよ、少なくともそれらと同等に重要なのである」。

ロールズは、格差原理と矯正原理は同一ではないが、前者は後者の意図するところの一部を達成すると言います。

「格差原理は、生まれつきの才能の分配・分布を共通の資産と見なし、この分配・分布の相互補完性によって可能となる多大な社会的・経済的諸便益を分かち合おうとする、ひとつの合意を実質的に表している。」

「代償として相対的利益の補償を与えることあるいは受け取ることがないならば、生まれもった資産の分配・分布における恣意的な無根拠な境遇もしくは社会生活を開始する地位から[不当な]利得を挙げたり損失をこうむったりする者が皆無であるような、社会システムを創設することを願うのであれば、私たちは格差原理へと導かれることになる」とロールズは言い切っています。

(by インディーロム 渡邉修也)

ページトップへ