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H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その10:
自然本性的自由の体系」

前回の復習になりますが、「各人の利益」については「効率性原理」と「格差原理」という対立軸、「全員に平等に開かれているか」については「才能に開かれたキャリア(職業選択)としての平等」と「公正な機会均等としての平等」という対立軸、これらの2つの対立軸の掛け合わせ(2×2=4)となり、再分配に関して以下の4つの解釈に分かれることになります。

  1. 自然本性的自由の体系
    [効率性原理]×[才能に開かれたキャリア(職業選択)としての平等]
  2. 自然本性的な貴族制
    [格差原理]×[才能に開かれたキャリア(職業選択)としての平等]
  3. リベラルな平等
    [効率性原理]×[公正な機会機会均等としての平等]
  4. デモクラティックな平等
    [格差原理]×[公正な機会機会均等としての平等]

ロールズの最終的な見解としては<デモクラティックな平等>となるわけですが、ロールズは『正義論』の中で、他の3つについても考察しています。

まずは<自然本性的自由の体系>に関する考察です。

<自然本性的自由の体系>の主張とは、「効率性を充たしており、地位を求めて努力する意欲と能力を兼備した人びとにもろもろの地位が開かれているような基礎構造が、正義にかなった分配をもたらす」というものです。

社会全体の利益の総和が最大化された状態(パレート最適な状態)が最善かつ最良のものであり、余計な斟酌は必要ないとする立場です。

効率性について、<自然本性的自由の体系>は、以下のようにしてひとつの効率的な分配を選び出すことになると、ロールズは言います。

  1. 競争市場経済を特徴づける標準的な想定のもとでは、所得および富は効率 的に分配されること
  2. 資産の初期分配(すなわち、出発点における所得や富の分配および生来の才 能や能力の分布)によってこそ、任意の期間を経て生じる特定の効率的な分配 決定されること

つまり、各々の出発点における分配・分布によってこそ、任意の期間を経て生じる効率的な分配が決定されることになり、もしも、私たちが「効率性を良しとし、かつ正義に適っている」ということを受け入れるならば、資産の初期分配が時間をかけて決定される基礎をも受け入れなければならないだろうとロールズは言います。

また、[才能に開かれたキャリア(職業選択)としての平等]については、形式上の機会平等はあるものの、現実の社会では、所得や富の分配は、生来の資産(生来の才能や能力)の先行分布がもたらす累積効果にほかならない。生来の資産が開発されたり、されなかったりするのは、社会的情況やチャンスの偶発性次第なので、道徳的見地からすれば多分に独断・専横的で根拠がないこれらの要因が、分配上の取り分に不適切な影響を与えるのを許容してしまうところに、<自然本性的自由の体系>の最も明白な不正義がある、とロールズは断じています。

次回は、<リベラルな平等>についての、ロールズの考察をご紹介します。

(by インディーロム 渡邉修也)

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