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H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その9:
正義の二原理」

他者の権利および自由を承認し、社会的協働の利益と負担を公正に分かち合う ために原初状態で合意されるべき「正義の二原理」について、ロールズは考察 を進めます。

『正義論』では、最初に暫定的な「正義の二原理」を設定し、それらに関する 諸々の考察でかなりのページが費やされているのですが、その過程を追ってい くと途轍もなく時間がかかりそうなので端折らせていただき、ロールズが導き 出した「正義の二原理」の最終形をご紹介します。

<正義の二原理>

第一原理:
各人は、平等な基本的諸自由の最も広範な全システムに対する対等な権利を保持すべきである。ただし最も広範な全システムといっても[無制限なものではなく]すべての人の自由の同様[に広範]な体系を両立可能なものでなければならない。

第二原理:
社会的不平等は、次の二条件を充たすように編成されなければならない。
 (a)そうした不平等が、正義にかなった貯蓄原理と首尾一貫しつつ、最も不遇な人びとの最大の便益に資するように。
 (b)公正な機会均等の諸条件のもとで、全員に開かれている職務と地位に付帯する[ものだけに不平等がとどまる]ように。

第一原理は、正義/不正義を判断するための前提となる平等で基本的な自由を規定するもので、ロールズは「政治的な自由」「投票権や公職就任権」「言論および集会の自由」「良心の自由」「思想の自由」「人身の自由」「個人的財産=動産を保有する権利」「恣意的な逮捕・押収からの自由」をあげています。

また、2つの原理には順序があり、第一原理は、第二原理に先行します。第一原理がすべての前提となる平等な基本的自由を規定するものであるためです。

第二原理については、社会的不平等を是正するための再分配に関わるもので、「各人の利益」と「全員に平等に開かれているか」という2つ観点の掛け合わせによって、複数の解釈があり、ロールズはそれらの解釈について正義/不正義の判断おいて妥当か否かを論じています。

「各人の利益」については、「効率性原理」を重視する立場と、「格差原理」を重視する立場との対立軸が設定されます。

「全員に平等に開かれているか」については、「才能に開かれたキャリア(職業選択)としての平等」を重視する立場と、「公正な機会均等としての平等」を重視する立場との対立軸となります。

これらの2つの対立軸の掛け合わせで、2×2=4つの再分配に関する解釈に分けることができ、それら4つの解釈についてロールズによる考察が行われていきます。

再分配に関する4つの解釈とは、以下になります。

  • 自然本性的自由の体系:[効率性原理]×[才能に開かれたキャリア(職業 選択)としての平等]
  • 自然本性的な貴族制:[格差原理]×[才能に開かれたキャリア(職業選択) としての平等]
  • リベラルな平等:[効率性原理]×[公正な機会機会均等としての平等]
  • デモクラティックな平等:[格差原理]×[公正な機会機会均等としての平等]
これら4つの解釈についての、ロールズの考察と見解は次回以降に。

(by インディーロム 渡邉修也)

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