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H2Hマーケティング実践編 
「正義とは?・その4:
正義の役割」

ロールズは「社会」について語る前に、社会の基本原理になっている「正義の役割」について、以下のように考察しています。

「社会を次のような人びとのつながりであると想定してみる」

  • 相互の関係を拘束する一定の振る舞いのルールを承認し、かつそれらのルー ルにおおむね従っている人びとが結成する、ほぼ自足的な連合体
  • 参加者の利益(good)を増進することをねらった協働のシステムがどんなも のであるかを明記するのが振る舞いのルール

ロールズは、こうした想定の下、人びとは、独力でひとり暮らしをするよりは、社会の中で他の人びとと協働した方が、相互の相対的利益が高いと判断して、社会に参加しているとします。

また、時には利害の衝突もあるが、これは社会的な協働がもたらす各人の取り分の多寡について人びとが無関心ではいられないからで、こうした衝突を避けるため、衝突が起こった時の裁定のためにも、「適正な分配上の取り分に関する合意事項を確定するために、一組の原理が必要となってくる」とし、「こうした原理こそが、社会正義の諸原理にほかならない」としています。

「それらの原理が、社会の基礎的制度における権利と義務との割り当て方を規定するとともに、社会的な協働がもたらす便益と負担との適切な分配を定めるのである」

続けて「社会が秩序だっている(well-ordered)とは、どういうことか?」ということに関しては、

  • 他の人びとも同一の正義の諸原理を受諾していることを全員が承知している こと
  • 基礎的な社会の諸制度がそれらの原理をおおむね充たしており、人びともそ のことを知っていること

このような場合に、人びとは自らの権益を確保するために、互いに過度の要求を出し合うかもしれないが、そうした要求事項を裁定するための共通の観点というものを、互いに承認しているとし、

「人びとに備わった正義の公共的な感覚のおかげでともに安定した連合体を組織することが可能となる」

「正義に関する公共的な考え方が人間どうしの秩序だった連合体の基本憲章を制定する」

としています。ですが、ロールズは、現実はそうはなっていないと続けます。

「しかし、これまで存在してきた諸々の社会は、こうした意味で<秩序だっていた>とは言えない。なぜならば、何が正義で何が不正義なのか、未だ未解決で係争中だからである」

「未解決で合意は成立していないにも関わらず、人びとは、基本的な権利と義務を割り当て、社会的な協働の便益と負担との適正な分配と見なされるものを決定する特質を有する一組の原理が必要であることを、人びとは理解しかつその諸原理に賛同する覚悟ができている」

ということで、「正義」とは何かを、突き詰めて考える必要があるとしているわけです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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