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H2Hマーケティング実践編 
「その2:
ロールズの『正義論』からスタート」

皆さんは、正義とはどういうものなのか、考えたことがあるでしょうか?私は、恥ずかしながら真面目に考えたことはありませんでした。日本に生まれ、昭和の時代に育ち、大岡越前やヒーローアニメの勧善懲悪もの、忠臣蔵の判官贔屓、日本国憲法が掲げる不戦と基本的人権など、漠然と正義ってこんな感じだよね、裏金はやっぱ処罰すべきだよねとか、ざっくりと感覚的、感情的な善悪の判断をしてきたわけです。つまり、哲学や倫理学、社会学、政治哲学などをきちんと学んでこなかったということになります。

今回スタートしたシリーズは、きちんと学んで来なかった私が正義についてコツコツ学んでいく過程をシェアすることになりますので、間違った理解の仕方がありましたら、突っ込みをいれていただけると嬉しいです。

手始めにジョン・ロールズの『正義論』から読み進めてみようと思います。

皆さんは、ロールズをご存知でしたでしょうか?昭和生まれの方は知らないという人も多いと思いますが、最近の高校生は「あー、ロールズね、無知のヴェール、公正としての正義の人だよね」と即答してきます。

これは、2022年度から高校の公民科に「公共」という科目が追加され、その学習指導要領の中に「正義」「公正」について生徒たちに考えさせることが求められており、授業の中で、ジョン・ロールズやアマルティア・セン(←この人も昭和育ちの方は知らないかもですね)等の思想や考え方が紹介されているからです。

まずは、ロールズという人について。ジョン・ロールズ(1921-2002)は、米国の倫理学・政治哲学者で、代表作は今回読もうとしている『正義論』(1971年)になります。

倫理学を志すきっかけになったエピソードとして、終戦直後、占領軍の一員として原爆投下直後の広島の惨状を目の当たりにしたことだったそうです。ロールズは後に『原爆投下はなぜ不正なのか?: ヒロシマから50年』という論文の中で、「すさまじい道徳的悪行」と非難し、「戦争を早く終わらせるためならどんな手段でも選んでもよい」という考え方を批判しています。

大きな目的(戦争終結)を達成するためには、多少の犠牲(原爆投下による民間人の犠牲)も仕方がないとする(容認する)正当化、つまり目的論的な正義を、ロールズは真っ向から否定しています。(日本人からすると、そもそも多少ではなく甚大だし、ジェノサイドなんですが!その他の空襲も!)

こうした功利主義的な政治判断について、ロールズは『正義論』の冒頭で以下のように言っています。

「私たちの哲学的伝統を長らく支配してきた功利主義と直観主義という両学説に取って代わるべき、有望な正義の理論のひとつを編み出すこと、それが本書『正義論』の達成目標である。」

「功利主義は、英語圏の政治思想の伝統を長く支配し続けてきたが、公正としての正義は、功利主義に取って代わるべき、ひとつの体系的な構想を筋道立てて展開したい。」

次回は、『正義論』の第1章から少しずつ読み進めていきたいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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