H2Hマーケティング実践編
「社会的責任とブランド・アクティビズム・12:
コトラーから非営利団体への10の提案」
コトラーとナンシー・リーの「社会的責任のマーケティング」は、企業のCSR担当者に向けて、企業の社会的責任に関する意思決定を助けるために書かれた本になりますが、企業側がどんな価値観、評価軸で支援先を選定しているのかを知るという意味で、企業からの資金援助や支援を得たいと考える非営利団体にとっても参考になる本です。
コトラーとナンシーもそうした読者を想定してか、本書の後半に「企業から資金援助や支援を獲得するための10の提案」という章が用意されています。
<企業から資金援助や支援を獲得するための10の提案>
- 企業から既に支援を受けている社会的課題の中で、追加資金を得ることでメリットが期待できるものを、具体的にリストアップする。
- 社会的課題と関連がありそうな企業をリストを作成する。(例:企業のミッション、製品やサービス、顧客、従業員の情熱、事業拠点のある地域、過去に実施した一連の寄付など)
- 企業へ直接(もしくは代理店などを経由して)アプローチし、企業の社会的取り組みに関する興味や実績について理解を深める。
- 相手先企業のビジネス・ニーズに耳を傾ける。
- 取り組んでいる社会的課題について、自分たちの強みや保有資源について、企業側と情報共有し、企業に対して最もアピールできる取り組みを見つけ出す。
- 企業への提案書は、提案先企業のビジネスやマーケティング・ニーズと一致するものがよい。
- ともに計画を策定し、ともに実施するような取り組み内容がよい。
- 細かな管理業務は、出来るだけ多く、支援を受ける団体側で担当することを申し出る。(企業側の負担が重くならない方がよい)
- 成果の測定やレポート作成の支援をする。
- 企業が好む方法で、企業貢献に対する認知を高める。
コトラーはこれらの提案について、非営利団体であってもマーケティングの発 想・手法を用いたアプローチが大切であり、顧客志向、ここでは資金援助や支 援を要請する企業をお客様とみなして、その企業のニーズやウォンツをきちん と把握した上で、支援要請の提案をした方がよいだろう、という至極当然のこ とを言っています。
活動資金ほしさに、やたらと企業側のニーズ、ウォンツに媚びへつらった提案 はどうかと思いますが、企業側の事情も考慮せず、情熱だけで一方的に要望す るのも問題があるわけで、きちんと相手のこと理解した上で、アプローチしま しょうということです。
コトラーは上記の10の提案は、企業経営者たちに次のような質問して返って きた答えをもとにまとめたものだといいます。
- 企業が社会貢献活動に求めているベネフィットとは何か
- 表立って言わない関心事とは
- 社会支援に取り組みたいと思わせる状況とは
- 複数の社会的取り組みの中から支援すべきものをどのように選ぶのか
- 申し出をどのように評価するのか
- パートナーに何を望み、何を期待しているのか
企業から援助を得るためのアプローチ方法や支援を確かなものにするためには、 企業の意思決定者は顧客の立場にあり、社会コーズの推進団体側はマーケター の立場で考え、行動すべきだという主張です。
異論もあるかと思いますが、そうしたマーケター的な視点や、分析、アプローチ を採り入れることは必要だと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)