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H2Hマーケティング実践編 
「社会的責任とブランド・アクティビズム・その11:
ソーシャルな用語の再確認」

数回にわたってユヌスのソーシャル・ビジネスについてご紹介してきましたが、この連載の本筋である社会的責任マーケティングとブランド・アクティビズムの話題に戻ろうと思います。

ここまでの話を一旦整理しておきますと、以下のようになります。

(コトラーとナンシー・リーの諸作における)ソーシャル・マーケティングとは、民間企業の ”企業の社会的責任に関する6つの取り組み” の1つとされています。

ソーシャル・マーケティングとは、公衆衛生・治安・環境・公共福祉の改善を求めて、企業が行動改革キャンペーンと企画、あるいは実行するための支援手段のことであり、常に「行動変革」が焦点であり、目指す成果である、ということです。

社会的課題の解決・改善、当事者の行動変革を促すための取り組みという点に関しては、ユヌスのソーシャル・ビジネスと似ていますが、ソーシャル・マーケティングは、あくまでも企業の社会的責任マーケティングの取り組みの1つであり、キャンペーンや支援活動として行われるます。

ユヌスのソーシャル・ビジネスは、社会的課題の解決・改善自体が企業の目的であり、事業の持続と発展のために収益は追求するものの、企業オーナーや投資家には利益は還元しません。

紛らわしいのは、ソーシャル・ビジネスとソーシャル・ビジネス・エンタープライズ(SBE)との違いです。

ユヌスは「多くのSBEは、社会的目標を掲げているものの、利益をオーナーや投資家に還元しているところも多く、(ユヌスが定義する)ソーシャル・ビジネスとは別物だ」と言っています。

また、コトラーなどが本の中で、SBEの成功事例として、ユヌスのマイクロ・クレジット事業を紹介していることも混乱の要因となっています(混乱しているのは私だけ?)。

そして、もう一つ区別しておかなければならないのは、近年のコトラーの諸作(「H2Hマーケティング」など)で登場する「ブランド・アクティビズム」と、企業の社会的責任マーケティングやソーシャル・ビジネスとの違いです。

コトラーは「ブランド・アクティビズムは、社会を良くしたいという願望から、社会的、政治経済的及びまたは環境的な改革を推進し、疎外し、または率いる事業の取り組みで構成される」といい、「従来のCSRが企業の面子を保つ上辺だけのものが多かったことに対して、ブランド・アクティビズムとは、企業が社会課題に対する立場や態度をより明確に具体的に行動していくことだ」と言っています。

90年代型の社会的責任マーケティングが、収益の中から社会に対して何かを還元したり、社会的課題を解決するための支援を行うものだったのに対して、ブランド・アクティビズムは、収益以前の企業の社会に向き合う問題意識と態度、行動に重点が置かれていることが分かります。

コトラーとナンシーの社会的責任マーケティングの本の中では、社会的責任に関する6つのオプション(選択肢)の中から、企業がどれを選択し取り組んでいくべきかという視点で語られていますが、ブランド・アクティビズムは、もっと企業の根幹の部分が問われるものであり、単なるCSR (企業の社会的責任)の発展形と捉えるのは間違いです。

(by インディーロム 渡邉修也)