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H2Hマーケティング実践編 
「社会的責任とブランド・アクティビズム・その9:
ユヌスの起業アドバイス・その2」

ユヌスは、ソーシャル・ビジネスの起業を目指す人に色々なアドバイスをしています。主なものを抜書きしてみます。

  1. 壮大な目標から具体的な目標へ
  2. 個人的な情熱を足がかりに
  3. 人間中心のソーシャル・ビジネス
  4. 生産性や市場アクセスを改善する
  5. 雇用を創出する
  6. 消費者を支援する
  7. 起業家精神を引き出す
  8. 生活に安定をもたらす

少し説明が必要なのは「人間中心のソーシャル・ビジネス」でしょうか。

これは「助けを必要としている人々を出発点としてビジネスを発想し、単にモノやサービスを一方的に提供するだけでなく、その人たちに力を与え、経済的・社会的に自立へ向かわせるような仕組みを考える」ということです。

まずはサービスを提供する相手とともに時間を過ごし、関心、ニーズ、能力、夢などを知り、話をじっくり聞くことことが肝心だと言います。(これはコトラーがH2Hマーケティングの中で提唱している「デザイン思考」の考え方と重なりますね。)

また、ビジネス・モデルが浮かんだら、小さな規模で試してみて、検証を繰り返すことも推奨しています。(これも、コトラーが「デザイン思考」や「リーン・コンテンツマーケティング」で推奨している、まずは簡素なプロトタイプを作り、検証し、改善すべきところがあれば、随時修正しながら、練り上げていく手順と一緒です。)

ユヌスは、パイロット・プロジェクトの予算や人材は最小限に抑えることを推奨しています。これは、ソーシャル・ビジネスの場合、初期段階の資金源は主に創業者のポケット・マネーであることが多いためだと言います。

ソーシャル・ビジネスを興すにしても、まずは副業としてスタートし、検証や経験を積み重ね、そのソーシャル・ビジネス・モデルがうまくいくと確信できるまでは、従来の仕事はやめない方がよいとアドバイスしています。そして、ソーシャル・ビジネスに専念できるようになり、晴れて本業をやめることができたら、それが人生でもっともすがすがしい日になると。

まったく新しいソリューションを考案する必要はなく、最初は成功しているソーシャル・ビジネス・モデルを模倣するだけでも十分に価値はあると言います。そのモデルを別の社会環境、顧客層、経済システムに適用できるかどうか、その方法を探っていくことで、対象となる地域社会や人々の抱える問題を解決することができるなら、大きな事業に発展していく可能性があると言います。

ユヌスは、パートナーとなってくれる企業を探すことも提案しています。ソーシャル・ビジネスは専門知識、経験、発想、予算、人材が不足することが多いため、そうしたリソースを持った企業を探すことも必要だからです。その場合に重要なのは、営利企業であるパートナーに対して、ソーシャル・ビジネスの報酬は「人々に仲間として手を差し伸べる満足感」だけだいう点をはっきりと認識してもらうことだと言います。

営利企業と組むことに対して、営利企業のイメージ向上に利用されるだけではないか?という疑念を持つ人も多いと思いますが、ユヌスは、この点について、ユヌスたちがむしろ営利企業を利用していると考えるべきであり、仮に利用されたとしても、それが善なる目的のためなら、それはそれでよいと考えているようです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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