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H2Hマーケティング実践編 
「社会的責任とブランド・アクティビズム・その6:
ソーシャル・ビジネス・エンタープライズ(SBE)とは」

ソーシャル・ビジネス・エンタープライズ(SBE)は、「社会的課題の解決が企業の最も重要な事業目的とされ、企業の意思決定に明確に反映され、同時に利益をあげる企業」になります。

日本では、社会的課題の解決を目指して企業する起業家を「社会起業家」と呼び、社会起業家が立ち上げるビジネスを「ソーシャル・ビジネス」と呼ぶことが多いようで、そうした社会起業家を育成する教育機関もいくつかあるようです。

SBEとして、よく成功事例として紹介されるが、バングラディシュのムハマド・ユヌスが起業したグラミン銀行です。

ムハマド・ユヌスは、「貧困の終焉」を社会的コーズとして、グラミン銀行を起業。貧しい人々を対象に「マイクロ・クレジット」と呼ばれる少額の無担保融資を行う事業をスタートしました。

マイクロ・クレジットには、貧困から脱却するためのいくつの工夫があります。

「融資を元手に事業を行うこと」、借主はその事業収益から返済するとともに、経済的な自立の道筋をつけることを目的に掲げています。

「地域グループの同意が必要」、お金を借りる際には地域グループの同意が必要とされます。借主がグループの一員という意識を持つことで、返済義務の意識も高くなるそうです。また、個人に問題が生じた場合でもグループ全体が問題解決に当たる(連帯保証人とは異なる)こと。それによって、事業が苦戦したり困難な状況に陥った時でも、乗り切っていく確率が高くなるそうです。

こうした工夫によって、グラミン銀行は高い収益性を確保しているそうです。

つまり、貧困層の経済的自立という社会的コーズと、収益性との両立が達成されているということです。

ムハマド・ユヌス自身は、ソーシャル・ビジネスの定義について、「社会的利益を追求する企業であること」と「得られた利益は配当に回さずすべて再投資すること」をあげています。

1つ目については、ソーシャル・ビジネス・エンタープライズ(SBE)の定義とほぼ重なりますが、2つ目については、SBEによって見解が異なるように思われます。少なくともユヌスは再投資に回すべきと考えているわけです。

ユヌスは経済学博士でもあるのですが、「貧困のない世界を創る」や「ソーシャル・ビジネス革命」などの著書の中で、格差や貧困を生み出す資本主義の問題点を指摘しつつ、それらを克服するための事業のあり方や、向かうべき社会について語っています。

日本においては、お花畑と一笑に付されることが多いのかもしれませんが、そうした人々の中にも資本主義社会の行き詰まりを感じている人も多いはずです。

ソーシャル・ビジネスを志す人以外でも、ユヌスの言葉に耳を傾ける価値はあると思われます。次回は、ユヌスの著作の中から、印象に残った点を拾って、ご紹介したいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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