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H2Hマーケティング実践編 
「社会的責任とブランド・アクティビズム・その5:
3つのソーシャル・マーケティング」

前回は、社会的責任の活動に関して企業が選択し得る「6つの取り組み」を紹介しましたが、その中に「ソーシャル・マーケティング」というものがありました。

マーケティングの世界では、この「ソーシャル・マーケティング」という用語が、いくつかの意味で使われていて、話をしていて混乱することがありますので、ここで整理しておきたいと思います。

  1. 民間企業のCSR活動の取り組みの1つとしてのソーシャル・マーケティング
  2. 公共・非営利団体のコーズ達成にむけたマーケティングとしてのソーシャル・マーケティング
  3. ソーシャル・ビジネス・エンタープライズのマーケティングとしてのソーシャル・マーケティング

1番目については、前回の「企業の社会的活動」の6つの取り組みの1つとしてご紹介したもので、他の5つと比べ、行動改革(behavior change)にフォーカスしていることが特徴となります。

2番目は、コーズ達成に実際に取り組んでいる非営利団体などが、自らの事業に、マーケティングの考え方やノウハウなどを採り入れて、応用していくことです。

公共・非営利団体のマーケティングで特徴的なのは「顧客の二面性」です。端的に言えば、受益者と支援者ということになります。

何らかの社会的課題の解決や改善に向けて、具体的な対象者(受益者)をターゲットとして定め、対象者の行動改革を促していく等の活動をやっていく際の対象者、受益者が、マーケティングのSTPにおける“顧客”ということなります。

もう一つの顧客は、コーズに対する支援を要請する先の民間企業となります。非営利団体は、民間企業の事業内容が、自らの主張するコーズとの親和性を考慮し、さらに、その企業が支援をしやすい内容で支援要請をする必要があります。つまり民間企業側の「6つの取り組み」の中で、どれが企業側として支援しやすい内容・形態なのか、考慮しながら支援要請の提案を行うということになります。

非営利団体の顧客の二面性については、じつはこの二者以外にもあります。ボランティアとして参画してくれる方々は、スタッフでもありますが、顧客でもあります。また、非営利団体の会員や組合員、さらには地域住民などにも、配慮していく必要があり、二面性というより、多面性と言った方がよいかもしれません。

マネジメントの大家・ドラッカーは「非営利組織のマネジメントはビジネスよりも難しい。非営利組織には、業績を計るための利潤というものさしがないからである」と言っています。

70年代前半に、公共・非営利団体のマネジメントやマーケティングの指導にあたったドラッカーとコトラーは以下のようなコメントを残しています。

「ミッションや理念は立派だが、マネジメントが不在であった」(ドラッカー)
「助言はほしい。でもお金儲けはいやだ」(コトラー)

次回は、3番目のソーシャル・ビジネス・エンタープライズのマーケティングとしてのソーシャル・マーケティングについて復習していきたいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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