H2Hマーケティング実践編
「社会的責任とブランド・アクティビズム・その4:
企業の社会的責任 6つの取り組み」
コトラーの「社会的責任のマーケティング」には、企業の社会的責任に関する活動の選択オプションとして「6つの取り組み」が紹介されています。
<企業の社会的責任 6つの取り組み>
- コーズ・プロモーション
- コーズ・リレーテッド・マーケティング
- ソーシャル・マーケティング
- コーポレート・フィランソロピー
- 地域ボランティア
- 社会的責任に基づく事業の実践
コーズ・プロモーションとは、企業が、資金、物資、その他企業資源を寄付することで、社会的コーズ(大義)に対する意識や関心を高めるための資金調達、人々の参加、ボランティア募集を支援する活動で、説得的コミュニケーションが主な活動となります。
コーズ・リレーテッド・マーケティングとは、期間を限定して、特定の製品の売上のうち何%かを、特定のコーズに対して寄付するものです。
コーズ・プロモーションの場合は、製品の売上げとは直接連動しませんが、コーズ・リレーテッド・マーケティングの方は、製品の売上げと直接連動するところが大きな違いです。後者の方は、賛同する消費者が多い場合には、企業側はコーズへの支援だけでなく、売上アップ効果も期待できます。
ソーシャル・マーケティングの特徴は、行動改革(behavior change)にフォーカスしているところです。コーズ・プロモーションがコーズへの注目、募金やボランティア募集に力点を置いているのに対して、ソーシャル・マーケティングの方は、行動改革を促す具体的なキャンペーンの企画や実施への支援活動となります。
コーポレート・フィランソロピーは、チャリティやコーズに対する現金贈与、寄付、現物支給など、伝統的に行われきたものです。近年は、事業のゴールや企業のパーパスに照らして、支援対象を戦略的に選択するようになっています。
地域ボランティアは、従業員、取引先企業、フランチャイズ企業が、自治体や地域コミュニティの活動への参加・協力を呼びかけたり推奨するような取り組みです。企業が組織的に関わるだけでなく、個々の従業員がボランティアに関心を向け、参加することを支援したり、有給休暇の付与、活動の評価なども含まれます。
社会的責任に基づく事業の実践とは、企業が事業活動の中で、社会福祉や環境保護などに関連した事業に投資したり、自ら事業を立ち上げるような取り組みです。
これら6つの取り組みから、どれを選択し組み合わせるのか、また予算配分をしていくべきか、CSR担当者は検討し判断していくことになります。
コトラーによると、80年代までは「何をしたらよい会社として映るのか」という視点で支援先が選ばれ、どちらかというと「義務を果たす」という感覚で予算配分がされることが多かったのに対して、90年代以降は、「事業の成功と善行の実践の両方を満たしたい」ということで、自らの企業価値に合った関心領域を戦略的に選ぶようになったとしています。
マーケティング3.0以降、H2Hマーケティングでは、ブランド・アクティビズムが重視され、企業は、社会的な課題や問題点について、より明確に態度表明し、いかに具体的な行動をとっているのかが問われ、それが企業への評価となり、業績にも影響する時代になってきています。
(by インディーロム 渡邉修也)