H2Hマーケティング実践編
「社会的責任とブランド・アクティビズム・その3:
CSRの定義の再確認」
まずCSRの定義から復習します。コトラーの「社会的責任のマーケティング」では、「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」について、以下のように定義しています。
「企業の社会的責任とは、企業が自主的に、自らの事業活動を通じて、または自らの資源を提供することで、地域社会をよりよいものにするために深く関与していくことである。」
コトラーは、この中で重要なのは「自主的」という言葉だ、と言っています。法律で定められたものでなく、また道徳や倫理とも性質が異なるもので、企業が「自らの意思」で、地域をよりよいものにし、社会に貢献しようとする活動なのだというわけです。
この本は2005年に出たものなので、現在であれば、SDGs的な観点を加味し、地球環境や、格差や差別の是正、持続可能な社会にしていくために、企業はどのように関与し貢献できるのか、と読み替えるべきでしょうか。
続けてコトラーは、企業が社会的責任を果たすために行う取り組みについて、次のように定義しています。
「企業の社会的取り組みとは、社会的コーズへの取り組みを支援し、社会的責任を果たすために企業が行う主要な活動のことである。」
コトラーは、1994年のクレイグ・スミスの論文から新しいコーポレート・フィランソロピー(企業の社会貢献)のあり方について以下のように紹介しています。
「特定の社会的コーズへの取り組みに対する長期的コミットメントであり、金銭的な寄付行為以上のものである。フィランソロピーのための予算だけでなく事業部からも資金を調達し、戦略的なアライアンスを組む。新しいコーポレート・フィランソロピーでは、目標に向かってビジネスを進めるのと同じように、これらの活動に取り組まなければならない。」
コトラーは「かつては “できるだけ簡単にできる善行をせよ” というのが多くの企業の経験則になっており、短期的コミットメントとして細切れの寄付を行い、結果として資金のばらまきになっていたが、90年代中盤以降は “よきことをただ行うのではなく、最適な活動となるように最善をつくす” ことと、 “事業の成功と善行の実践” の両方を満たしたいと考える企業が増えてきた」と言っています。
コトラーは、そうした取り組みが企業にもたらすプラスの影響として、以下のものをあげています。
- 売上げや市場シェアの増加
- ブランド・ポジショニングの強化
- 企業イメージや評判の向上
- 従業員にとっての魅力度や労働意欲の向上と離職率の低下
- コストの削減
- 投資家や金融アナリストに対するアピール力の強化
善行の実践と事業の成功は両立するのだというわけです。
次回もコトラーの「社会的責任のマーケティング」から、企業の社会的取り組みについての「6つ戦略オプション」を復習していきたいと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)