H2Hマーケティング実践編
「社会的責任とブランド・アクティビズム・その2:
ブランド・アクティビズムとCSRの違い」
ブランド・アクティビズムとは、企業が社会課題に対する立場や態度を明確にし具体的に行動していくことです。CSR(企業の社会的責任)に似ていますが、両者の共通点、相違点はどんなところにあるのでしょうか。
CSRの場合、多くの企業が「中立」を目指すことが多いのに対して、ブランド・アクティビズムの方は、「旗幟鮮明」、旗色をはっきりさせる、どちらにつくのか、どのように行動するのか、明確に表明することが、企業に求められているところが大きな違いかと思います。
コトラーは「グローバリズム化した世界では格差や貧困が広がり、人々は不安を解消するソリューションを求めている」、「混乱に満ちた世界で、人々の社会・経済・環境などの公正さに対する欲求に対して、ミッション・ビジョン・価値で応えてくる企業を求めており」、「もはや中立であり続けることはできなくなっている」と言っています。(「コトラーのH2Hマーケティング」)
また、深く関わること、真摯な態度も求められています。「できるだけ簡単に善行をせよ」ということが経験則になっており、CSR予算の範囲内で「何をしたら(もっとも効率よく)良い会社として消費者の目に映るのか」という観点で、寄付先や活動内容が決められていたことも多かったと、指摘しています。(ナンシー・リーとの共著「社会的責任のマーケティング」)
ブランド・アクティビズムになると、こうした “言い訳“ のような “上辺だけ“ の取り組みはあり得ないということなります。
ブランド・アクティビズムとCSRの違いを明らかにしていくためには、まずはCSR(企業の社会的責任)について整理しておく必要があります。コトラーとナンシー・リーの共著である「社会的責任のマーケティング」を基に、復習していきたいと思います。
まずは「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」の定義については、「企業の社会的責任とは、企業が自主的に、自らの事業活動を通じて、または自らの資源を提供することで、地域社会をよりよいものにするために深く関与していくことである」とのこと。
また、コトラーはこうした社会的責任を果たすために行う活動を「企業の社会的取り組み」と名づけ、「社会的コーズへの取り組みを支援し、社会的責任を果たすために企業が行う主要な活動のことである」と定義しています。
そして、企業の取り組みとして支援されている「社会的コーズ」の類型としては、次のようなものがあげられています。
- 地域社会の健康:エイズ撲滅、乳がんの早期発見、時宜を得た予防接種など
- 安全:飲酒運転撲滅、犯罪防止、自動車安全装置の使用促進など
- 教育:識字教育、IT教育、教育に関する特殊ニーズなど
- 雇用:職業訓練、雇用慣行の問題、工場立地など
- 環境:リサイクル、有害物質の廃絶、過剰包装の抑制など
- 地域社会と経済発展:低利子住宅ローンなど
- その他、人間の基本的生活や欲求:飢餓、ホームレス、動物の権利、平等な選挙権、差別撤廃に向けた試みなど
以上になります。
次回もコトラーの「社会的責任のマーケティング」から、CSRについて復習していきたいと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)