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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その14:
令和のコメ騒動」

この連載では、食料安全保障について十数回にわたって書いて来ましたが、この8月下旬〜9月にかけて米不足が発生。スーパーの棚からお米が消えるという現象が起こりました。

今回は、今回の米不足の騒動と日本の食料安全保障政策の関係について考えてみたいと思います。

まず、米の流通段階での在庫量と国の備蓄量ですが、どちらも「余裕がある」というが実態のようです。

今回の米不足騒動は、地震、台風に備えるために少なからぬ消費者が買いだめ・買い置きの行動をとったことで、一部の小売店の棚がからっぽになり、その報道を見た消費者が買えるうちに買っておかなければと、さらなる購買行動に・・・といった連鎖によるものと考えられます。

流通段階での在庫量については、年間契約などで一定の供給量を確保済みの小売業者と、普段からあまり在庫を抱えないように都度仕入をしている業者とで明暗が分かれ、後者の方で仕入が滞り、店の棚から商品が一時的になくなったということになります。

また、こんな時にこそ、政府は備蓄米を緊急放出すべきなのではという意見もあったようですが、政府側の認識としては、昨年は確かに例年と比べ作柄が悪く米の生産量も少し減少したのは事実だが、備蓄米を放出するほどの緊急事態ではない、とのこと。

備蓄米は、有事のために備蓄しているのであって、地震や台風といった一時的な需給の増減程度では “おいそれとは出せない” ということのようです。

東大の鈴木宣弘先生の解説によると、備蓄米放出を軽々にやってしまうと、これまで粛々と進めてきた減反政策の非を認めることになるため、官僚の面子が許さない、ということも裏事情としてあるようです。

ちなみに、有事のためと言われる備蓄米ですが、どれくらいあるのでしょうか?その量は、100万トンと言われ、この量は、わずか1カ月半足らずの備蓄量だそうです。

「台湾有事は日本の有事」などと騒ぎ立て、お隣の中国などを仮想的敵国に見立てる人たちもいますが、中国は1年半以上の食料備蓄があるそうです。

14億人×1年半と、1.2億人×1カ月半では、兵站的な面で、まあ、戦争はやってはいけないこと、やれるはずもないことは、小学生でも分かりますよね?

だからこそ、輸入先を多様化して、輸入先への積極投資を拡大して、食料を確保していく、という輸入へシフトしていこうとする政策も、やはり危ういものがあります。

ここ数年、欧州は夏の日照りが酷く、農作物の生産量が縮小しています。干ばつで、ワイン用のブドウ生産量が減少、ワイン価格が高騰。スペインでは、やはり干ばつでオリーブ生産が激減しているそうです。欧州では、今年も日照りや、先日は9月なのにイタリアやフランスで大雪になるなど、異常気象が続いており、昨年以上に農作物の生産量がダウンしそうな状況です。

ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルのガザ侵攻による中東情勢の不安定化などもあり、欧州各国は、今後に備え、食料の輸出を控え、食料の輸入を増やすところが増えています。

日本の場合は、円安で、ここ数年来、世界の食料市場で食料の買い負け(競り負け)することも多々あるわけですが、今後も調達に苦労しそうです。国内で作れないなら、海外から買えばよい、という発想はあまりに楽観が過ぎるのではないでしょうか。

(by インディーロム 渡邉修也)

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