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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その13:
食料・農業・農村基本法改正法の問題点」

「農政の憲法」と呼ばれる「食料・農業・農村基本法改正法」。今回は改正点についてもう少し深掘りしていきたいと思います。

第一に指摘したい点は、改正前と比べ「食料自給率」の優先度が低くなったことです。改正前は基本施策の大きな柱として「食料自給率の目標」が第一に掲げられていたのですが、今回の改正では、4つの柱の1つである「食料安全保障の確保」の中で、安定した食料確保のための施策の1つとして “食料自給率も大切” という程度の位置づけになっているのです。

変わって強調されているのが、国内生産では需要を満たすことができない農産物の安定的な輸入を確保するため、国と民間との連携による「輸入の相手国の多様化」「輸入の相手国への投資の促進」「その他必要な施策」を講ずるというものです。

確かに、農業従事者数が減少し、後継者難で耕作放棄地が増えている事実からすれば、現実路線として輸入による食料確保に軸足を移したくなるのも分からなくもないのですが、それでよいのでしょうか?

他の先進国、日本と同様に国土に占める農地の割合が低いイギリス、スイス、韓国は、なぜ日本より自給率が高いのでしょうか?仕方ないで済ますことは簡単ですが、それでは現状を追認しているだけであり、今より良くしていこうという政策とは思えません。知恵を絞ることで、何か打開策はないのでしょうか。皆さんはどう思われますか?

輸入先確保のために海外投資を積極的に行っていくということですが、それはそれとして、国内で頑張っている農家の支援や、これから農業にチャレンジしてようする人たちへの支援になぜ予算をもっと配分しないのでしょうか。

AI、ドローン、ロボットの導入を支援することで、人手不足解消や新規参入を促すということが書かれていますが、そんなことで問題が解決するとは思えません。農業というものに魅力を感じ、都会から地方へ移り住み、農を営んでいく希望と生活設計の具体的なイメージを持って貰うためには、もっと手厚く継続的、体系的な支援の仕組みを作る必要があると思います。

そのほか、農村の振興に関する施策についても、女性の参画、高齢農業者のいきがい農業、障害者の就農機会と環境の整備、中山間地域等の地域社会の維持と振興、農泊などを通じた都市と農村の交流、といったことが並べられています。一つ一つは特に批判するようなものでもないのですが、場当たり的で散漫な印象を受けます。もっと大きなそして波及効果のありそうなものを考えられなのでしょうか。農水関係の官僚や政治家にグランドデザインを描ける知恵者はいなのでしょうか?

このようにかなり残念な内容の基本法改正なわけですが、この基本法とは別に、政府はあろうことか、同じ時期に、有事の際の食料確保のため法案として「食料供給困難事態対策法」も可決させています。

これは、食料危機の事態になった場合に、農家に対して、花や果物から、米やイモへの作物転換を要求し、従わないと罰するというもので、国民には食料を割り当て・配給するいうものです。

そんな事態にならないように、平時から自給率を高め、備蓄を積み重ねていくのが、本来の農政なのではないでしょうか。皆さん、どう思われますか?

(by インディーロム 渡邉修也)

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