H2Hマーケティング実践編
「食料安全保障とは・その12:
食料・農業・農村基本法改正法の4つの基本理念と基本的施策」
「食料・農業・農村基本法改正法」は、次の4つの柱に分かれています。今回はこの4つの基本理念と基本的施策を紹介していきます。
<食料・農業・農村基本法改正法 4つの基本理念>
- 食料安全保障の確保
- 環境と調和のとれた食料システムの確立
- 農業の持続的な発展
- 農村の振興
「食料安全保障の確保」ですが、その定義については「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」とされています。
基本理念は、「国民に対する食料の安定的な供給」と「食料の合理的な価格の形成」です。基本的施策は、農業生産の基盤等の確保とともに、農産物・農業資材の安定的な輸入の確保、輸入相手国の多様化と相手国に対する投資の促進などとなっています。
注目すべきは、食料自給率の向上の記述がないこと、輸入相手国の多様化と相手国への投資促進が盛り込まれていることです。基本的施策から「自給率」というワードが消えたということは、国は食料自給率アップは最早諦め、海外投資で食料を調達すればよいと考えているのでしょうか?これは大問題です。
「環境と調和のとれた食料システムの確立」については、食料の供給の各段階における環境負荷の低減が基本理念になりますが、基本的施策については、農業生産活動、食品産業の事業活動における環境負荷の低減促進という、とても曖昧な記述であり、具体的な方向性が示されないままになっているようです。
「農業の持続的な発展」については、基本理念として「生産性・付加価値の向上におる農業の持続的な発展」が掲げられ、基本的施策として「農業経営以外の多様な農業者による農地の確保」「農業法人の経営基盤強化」「農地の集団化・適正利用」「農業生産の基盤の保全」「スマート技術等を活用した生産性の向上」「農産物の付加価値の向上」「知財保護・活用」「農業経営の支援を行う事業者・サービス事業体の活動促進」「家畜の伝染性疾病 ・ 有害動植物の発生予防」「農業資材の価格変動への影響緩和」があげられています。
「農村の振興」については、基本理念として「地域社会が維持されるような農村の振興」が掲げられ、基本的施策としては、「農地の保全に資する共同活動の促進」「地域の資源を活用した事業活動の促進」「農泊の促進」「障害者等の農業活動による農福連携の環境整備」「鳥獣害対策」などです。
地域社会を維持していくためには小規模な農家でも存続できる基盤を残しつつ、現実問題として、後継者の居ない農家や、農業の継続が難しい農家から、“農業経営以外の多様な農業者”が耕作を請け負ったり、複数の農家が集団で農地を管 理運営していくことなど、高齢化する農家を多様な形態で束ねていくことで、農業生産と、農村および農業基盤をなんとか維持していこうという意図というか、“そうなったらいいな” 的な願いのようなレベルで、本気度があまり感じられないのは私だけでしょうか。
また、農泊などの農業体験などを通じた都会からのIターン移住者の増加や、障害者雇用におる農業就労者の確保など、農業と農村の維持をなんとかしようとしているようです。(これも願いですね。)
以上、4つの基本理念と基本的施策をざっと列記してみました。疑問点、問題点は沢山ありますが、それは次回に。
(by インディーロム 渡邉修也)