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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その11:
食料・農業・農村基本法改正法の改正の背景」

前回まで数回にわたって、日本の食料主権に関わる3つの法律について見てきました。今回から、2024年5月29日に成立した「食料・農業・農村基本法改正法」について見ていきたいと思います。

農政の憲法とも呼ばれる基本的な法律であり、1999年の制定以来、25年ぶりの改正になりました。

改正内容は多岐に及び、1つ1つについてコメントしていると全体像が見えづらくなる懸念がありますので、今回と次回は、農水省の発表資料を基にその概要のみざっくりと紹介していきたいと思います。

まずは、改正の背景について。この25年の間に、世界の食料需給バランスが大きく変動したこと、地球温暖化の進行、日本の人口減少と、農業および農村のめぐる諸情勢の変化に対応するために改正を行った、ということになります。

<改正の背景>

  1. 世界の食料需給の変動
  2. 地球温暖化の進行
  3. 日本の人口減少
  4. 食料、農業、農村をめぐる諸情勢の変化

まず、世界の食料需給の変動についてですが、この法律が出来た1999年当時、中国と米国は食料輸出国でしたが、2021年には両国とも食料輸入国に転じています。99年時点では日本が最も多い輸入国で、世界で流通する食料の40%を日本が買っていたのですが、21年になると中国が日本を抜いて世界一の食料輸入国となっています。米国も同様に輸入国に転じ、日本、英国に次いで第4位となっています。つまり食料争奪戦が激化しているということです。

地球温暖化の進行については、他の先進国と比べ、農業分野における温室効果ガス(GHG)排出量の対策が立ち遅れていることによります。

日本の人口減少については、2022年の1億2500万人から、2050年には1億人を割り込み9,500万人になると予測されています。

農業および農村をめぐる諸情勢については、基幹的農業従事者は2000年時点では240万人でしたが、2020年には136万人となり100万人以上減っています。

深刻なのは高齢化で、基幹的農業従事者の平均年齢は2021年時点で67.9歳でしたが、若手の新規就農者があまり増えていないことから、恐らく今年か来年には70歳を超えるとみられます。

さらに深刻なのは廃業の増加です。円安により輸入に頼っている肥料や野菜の種、灯油などの農業資材の高騰しているため、農業の継続を断念する農家が増えているのです。これは高齢の農家だけのの問題ではありません。

政府の予測では、2050年の基幹的農業従事者数は36万人とされていますが、このままの状態が続けば、もっと酷い状態になる可能性が高いと思われます。

背景のおおまかな説明は以上です。なんとも重苦しい状態であることは伝わったかと思います。

こうした背景から政府は「食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農業の持続的な発展のための生産性の向上、農村における地域社会の維持等を図るため、 基本理念を見直し、今回の改正を行った」というわけです。

法律は、次の4つの柱に分かれています。それぞれの基本理念と基本的施策の紹介は次回に。

<食料・農業・農村基本法改正法 4つの柱>

  1. 食料安全保障の確保
  2. 環境と調和のとれた食料システムの確立
  3. 農業の持続的な発展
  4. 農村の振興

(by インディーロム 渡邉修也)

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