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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その8:
農業競争力強化支援法の成立経緯」

前回は、食料主権に関して重要な3つの法律について概要をご紹介しましたが、それらが食料主権にとってどのように影響を与えるものなのか、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

まずは「種子法」ですが、正式名称が「主要農作物種子法」であることから、全国の農業試験場、研究機関が担ってきたのは、主要農作物(米、麦、大豆)の種子を守り、安価な価格、安定した品質で、全国の農家へ種子を供給するという役割です。

各地の農業試験場は、地域の在来品種の保存・維持のほか、地域の気候風土に応じた品種改良も継続的に行ってきました。

例えば、コシヒカリという品種ですが、実は沢山のバリエーションがあり、福井で栽培されているコシヒカリは、そのままでは茨城、兵庫など他地域では上手く育たないそうです。現在、各地で栽培されているコシヒカリは、各地の農業試験場が、その土地の気候風土に合わせ、独自に改良を重ねてきたものということになります。

コシヒカリ以外の品種もやはりバリエーションがあり、各都道府県のコメの推奨銘柄だけでも280以上の品種があるそうです。同様に麦、大豆、その他の作物についても、各都道府県ごとに多種多様な品種が存在し、それらは「種子法」によって維持されてきたわけです。

こうした状況が唐突に変わったのは、2018年の「種子法廃止」と、それに代わる新法「農業競争力強化支援法」の登場です。

「種子法廃止」は、2017年安倍内閣の時に、十分な議論もないまま、数の論理によって国会を通過したものですが、もとを辿っていくと、1996年の橋本内閣の規制改革推進会議まで遡ることができるそうです。

規制改革推進会議の農業ワーキング・グループでは、「(種子等の品種を含む)農業資材が多数であるため、無駄が多く生産性が低い」「民間にもよい品種がある」といった意見が出されたようです。これらの推進会議、ワーキンググループには、のちに郵政民営化など、一連の規制緩和に大きな影響力をもった宮内義彦氏、竹中平蔵氏などが名を連ねていました。

こうした流れに対し、農業関係のメディアや識者からは懸念の声が上がっていたのですが、上に書いた通り、2017年に「種子法廃止」が決定され、2018年には、それに取って代わる「農業競争力強化支援法」が、これもさしたる議論もないままに国会を通過、成立しています。

「農業競争力強化支援法」には、「農業資材の銘柄が多数であるため銘柄ごとの生産規模が小さく、生産性が低いものがある」「生産性の低いものについては、銘柄の集約の取組を推進する」というように、1996年のワーキンググループで規制緩和派の委員が主張してきた内容が色濃く反映されています。

多数あるコメの品種を、生産性の高い品種に絞り混むべきだと言っているわけです。

ここで問題なのは、「生産性の高い品種とは何か」ということです。それは、ワーキンググループで意見として出された「民間にもよい品種ある」ということであり、つまり民間が開発した高収量品種に積極的に置き換えていくべきだということなのです。

「高収量が期待できるならよいのでは?」と思う方もいらっしゃると思いますが、農の世界は、それほど単純なものでもありません・・・。続きは、また次回に。

(by インディーロム 渡邉修也)

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