H2Hマーケティング実践編
「食料安全保障とは・その6:
緑の革命とは」
今回は、「食料主権」問題の背景を理解する上で必要となる、「緑の革命」について学んでみたいと思います。
緑の革命(Green Revolution)とは、小麦、コメ、ジャガイモなどの主要穀物について、品種改良と高効率農法によって多生産を実現し、それを世界(主に途上国)に対して開発資金援助とセットで広めていくことで、対象国の食料増産を実現し、食料危機や飢餓をなくしていくことを目指した一連のプロジェクトのことを言います。
1940年代に、ノーマン・ボーローグ博士らによって研究プロジェクトが立ち上がり、ロックフェラー財団の資金援助などを受けながら、最初に倒伏しづらく収量の多いコムギ品種を開発、続いて収量の多いトウモロコシやコメの品種改良を行っていきました。
[高収量の品種]+[高効率農法]+[資金援助]の取り組みが最初に具体的に行われ成功を収めたのはメキシコでした。メキシコは1940年代までは長年、食料不足に悩まされ米国からの食料輸入に頼っていましたが、このプロジェクトによって大幅な食料増産に成功、短期間に小麦は3倍、トウモロコシは2倍と生産量を伸ばすことに成功、1950年代後半には小麦の自給を達成したそうです。
メキシコでの成功を受けて、1960年代には世界への展開が行われます。60年代前半にフィリピンでコメ増産に成功、60年代後半にはインドで小麦増産に成功します。
こうした成功を見て、他の途上国がこぞって、この「高収量品種、高効率農法、資金援助」の支援を要請が相次ぐようになり、各地域・各国での食料増産の成功によって、このプロジェクトは「緑の革命」と呼ばれるようになったそうです。
実際に、急速な人口増加とそれに伴う食料不足が懸念されていたアジア諸国は、緑の革命によって食料危機を回避し、急速な人口増加に対応できたことで、ノーマン・ボーローグは1970年にノーベル平和賞を受賞しています。
その後も、緑の革命のモデルは、品種・農法・経済援助などの組み合わせを様々に変えながら、アジア以外の中南米やアフリカなどにも展開されていき、今日に至ります。
このような経緯をみると、緑の革命は良いことづくめのように思われますが、負の側面もあります。
単純に新品種を導入しただけでは多収量になるわけではなく、灌漑施設の多大なインフラ投資や、トラクターや稲刈り機など農家の機械化投資、化学肥料、農薬など継続的な出費が必要となります。
そのため資金を持った農家が経営規模を拡大させる一方で、費用負担に耐えられない小規模零細農家が債務負担で貧困化していったり、収穫量が増えてもそれが自国の消費にまわらず飢餓が発生したりという問題も起こったりした事例もあります。
また、単一品種の生産であるため、ひとたび病害虫が発生すると被害が甚大化しやすいことや、農薬や肥料の使用が前提になっているため、使用量も徐々に増えていき、その分、農家の負担が増えていくことも分かってきました。
また、「食料主権」の観点からは、種子・農薬・肥料・農業機械などの国際企業による途上国の農業の間接的支配の構造が問題視されています。
(by インディーロム 渡邉修也)