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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その5:
食料主権とは」

前回は、国際関係学・安全保障の髙橋敏哉教授の解説をもとに、食料安全保障の課題解決には「食料への権利」と「食料主権」という2つアプローチがあること、さらに日本においても長年に及ぶ経済の低迷と経済格差の拡大から「食料への権利」が危うい状況になってきていることをご紹介しました。

今回は、「食料主権」についてです。

髙橋教授によると、「食料主権」の考えとは「グローバル化の中、先進国の大企業に支配されている途上国の農業生産、分配、消費のあり方を転換し、現場の農業従事者の農業と食料に関する『決定権』の回復を目指す運動や論点」とのこと。

「食料主権」の主な主張・論点について、高橋教授はシャーンバッハーの文献をもとに以下のようにまとめています。

  • 人権を守ること
  • 地産地消を推進すること
  • 小農業者、小作農が土地、農業資源へ十分且つ適切にアクセスできること
  • 種苗、畜産、遺伝子に関する特許から農民を保護すること
  • 水等の共有財産を均等且つ持続可能な範囲で配分すること
  • 農地分配の均等化を図ること
  • 小農業者等が農業生産、消費を自己決定すること
  • 国家が、輸入食料のダンピング価格から国内農業を保護する権利を持つこと
  • 持続可能な農業(アグロ・エコロジ―)の手法を取ること

上記の内容を読むと「ああ、途上国のことね」と早呑み込みされる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本もじわじわと「食料主権」が脅かされるつつあることをご存知でしょうか。

特にここ数年、日本でも顕著になり懸念されているのは、上記の論点のうち「種苗、畜産、遺伝子に関する特許から農民を保護すること」に関連した法改正の動きです。

特に端的で注視すべきと考えられるのは、「種子法廃止」「農業競争力支援法」「種苗法改正」という、2017年から2020年にかけて国会での十分に審議もなく矢継ぎ早に可決され施行が始まった3つの重要法案と、今年(2024年)の2月に閣議決定された「食料・農業・農村基本法」の改正案です。

前者3つの法案は、政府や農水省による個々の法案に関する説明を聞くと、なるほど日本の種子(たね)の著作権を守り日本の農業の活性化を図っていくには、このような法律も必要かもしれないと、うっかり納得してしまいそうなのですが、3つの法案を俯瞰し、相互の関連をみていくと、日本の農業の保護というよりも、種子や農薬、遺伝子組換え品種の権利を有している大企業とって有利になるように、法律が書き換え(改正)られたり、法律そのものが廃止(種子法の廃止)されているように見えます。

また、今年2月に閣議決定された「食料・農業・農村基本法」の改正案では、食料確保のために海外への投資を促進し、輸入先の多様化を図っていくとか、農業法人の資本比率の制限を緩め、農家の買収や経営の参画をしやすくするなど、こちらも大企業やグローバル企業にとってメリットがもたらされる内容が並んでいます。

「食料主権」のアプローチとは、新自由主義的グローバル化に反対し、当事国の農業者への決定権の回復を求める主張や運動ですが、日本の農業は、こうした「食料主権」の流れに逆行する方向へ向かっている(向かわされている)ようです。

次回は、少し回り道になりますが、こうした「食料主権」問題の背景を理解する上で必要となる、1960年代以降の「緑の革命」について学んでみたいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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