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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その4:
食料への権利とは」

前回は、種や肥料の大半を輸入に頼っていることも考慮すると、日本の食料安全保障は、食料自給率の数字以上に深刻な状況にあることをご紹介しましたが、今回は、これまでご紹介してきたデータをもとに、食料安全保障について考えていきたいと思います。

そもそも食料安全保障とは何か。国際関係学で安全保障が専門の髙橋敏哉(松蔭大学教授)によると、近年の食料安全保障の課題解決への主なアプローチには「食料への権利(the right to food)」と「食料主権(food sovereignty)」という2つがあるそうです。

「食料への権利」は、ひらたくいえば、人権として、人々が食料へのアクセスする権利を確保することです。飢餓状態をなくし、健康的で活動的な生活を送るために十分な食物エネルギー量を継続的に入手するできるようにすることです。

飢餓というと、どこかの遠い国の話しと思われる方も多いと思いますが、実は日本でも飢餓状態にある人が増えています。

国連食糧農業機関(FAO)では、毎年「世界の食料安全保障と栄養の現状」という報告書を公表していますが、その2023年版によると「飢餓が多い国ランキング」で「日本は34位、400万人が飢餓状態になったことがある」ということでした。ちなみに、日本の前後の国をみると、32位 ルワンダ、33位 ニジェール、[34位 日本]、35位 タイ、36位 ブルキナファソとなっています。

飢餓人口の割合では「94位 日本 3.2%」となっています。2022年の日本の人口は1億2435万人なので、398万人(約400万人)、実に30人に1人が飢餓状態にあるということになります。

飢餓状態とは、単に食費に困っているレベル以上の危機的な状態です。生活に困り、食費を削ることで栄養状態が低下している「飢餓」予備層を含めると既に20人に1人までの割合が高まっているという分析もみられます。

厚生労働省の調査でも、2021年の貧困線は127万円。収入が貧困線に満たない世帯の割合は全体の15.4%であり、この割合は増加傾向にあるそうです。

この原稿を書いている2024年4月時点で実質賃金は23カ月連続で減少しており、4月以降も、食品のほか、生活必需品・各種サービスの更なる値上げが続いています。

髙橋教授によると「2000年代後半に入り、世界の穀物市場は新興国や発展途上国での人口の増大、その経済発展に伴う食料需要などの構造的要因に加え、気候変動、バイオエタノールのニーズの増大、ODAを中心とした農業投資の低下、また都市化の進展、農村の崩壊と農地の減少などを伴い、不安定な時期に突入している」ということです。

さらに、長期化するロシア・ウクライナ紛争、イスラエル・パレスチナ問題、イスラエル・イラン紛争による中東情勢の緊迫化など、国際間の食料の安定確保に暗雲が立ちこめています。

「食料への権利」を確保することは、個々人の努力ではなかなか改善できないことかと思われます。一刻も早い政策の転換が必要なのではないでしょうか。

次回は、食料安全保障のもう一つのアプローチである「食料主権」について見ていきたいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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