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H2Hマーケティング実践編 
「食料安全保障とは・その3:
食料・農業資材の輸入先」

前回は、国産が多いようにみえる畜産物が飼料の輸入依存率が高いために自給率が16%であること、自給率が75%でそれなり高く見える野菜も実は種の9割以上が輸入に頼っていること、養鶏用の雛がほぼ100%輸入であることなど、日本の食料自給率38%を支えている構造は、実はかなり脆弱で海外依存度が高く、食の安全保障上、かなり危うい状態であることをみてきました。

今回は、主要品目の海外依存度と主な輸入先を見ていきたいと思います。

まずは小麦ですが、83%を輸入に頼っており、米国、カナダ、豪州が主な輸入先になります。ロシア・ウクライナ紛争の直接の影響はないように見えますが、 “世界の穀倉地帯” と言われたウクライナの小麦生産量は紛争前と比べ20%以上減少しており、中長期的に見ても世界の小麦相場への影響は大きいと言えます。当然、日本にとっても大きなダメージとなります。

トウモロコシはほぼ100%が輸入となります。私たちがスーパーで買って食べる国産トウモロコシはごく僅かで、大半は家畜用の飼料、コーン油などで使われています。米国が7割を占め、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ共和国の順になります。

大豆は93%が輸入で、米国8割、ブラジル、カナダ、中国などです。

ちなみに、カロリーベースで62%を占める輸入食料の輸入先の内訳を見ると、米国23%、カナダ11%、豪州9%、ブラジル3%。マレーシア3%、EU2%、中国2%、インドネシア2%、タイ1%、アルゼンチン1%、ニュージーランド1%、フィリピン1%、南ア共和国1%、その他2%となります。

マレーシアとインドネシアが多い理由はパーム油で、インスタント麺、冷凍食品、ポテトチップスなどのなどの揚げ物や、パンや菓子などのショートニングなどに使われています。(※パーム油は、シャンプー、化粧品などにも使用されていますが、食料自給率の計算からは除外されます。)

また、スーパーの売り場では中国製が多いように感じられるのですが、中国が2%と意外に少ないのは、家畜用飼料やパーム油など食品加工に使われる原材料が少ないためです。

かつては中国のシェアがもっと高かった時期もありますが、2008年の冷凍食品の中毒事件や野菜の農薬汚染などが問題視されことで一時期輸入量が減少したこと、経済発展で中国国内の食料消費量が伸び、中国自体が食料を輸入する側に転じたこと、日本側も食料に輸入先を他へシフトさせたことなどが背景にあります。

食料の主な輸入状況は以上のようになります。

食料自給率には直接カウントされませんが、肥料や農薬など農業資材の海外依存率もかなり高くなっています。

肥料の三大要素である窒素、りん酸、加里の原材料は、ほぼ100%輸入に頼っています。主な原料と輸入先は、尿素(マレーシア、中国など)、リン酸アンモニウム(中国、モロッコなど)、塩化カリウム(カナダなど)です。

塩化カリウムについては、ロシア、ベラルーシの割合も高かったのですが、日本がロシアに経済制裁したことへの対抗処置で入ってこなくなり、それをイスラエル産などでカバーしている状況です。

農薬に関しては、農薬原体の23%を輸入しているそうです。農薬に関しては、輸入の依存度というよりも、日本の農業の農薬使用量の多さが問題かと思います。単位面積(1ha)当たりの農薬使用量は11.8㎏で、中国に次いで世界第2位です。中国からの輸入野菜の農薬を問題視する人が多いわけですが、中国が約13kg、日本が約12kgですから五十歩百歩かと・・・。

農薬を多用すると、土壌の微生物も殺してしまい土地が痩せるため、肥料を大量に使用しないといけなくなり、悪循環が発生します。

中国が農薬を大量に使用しているということは、中国の土地が痩せ、肥料がさらに多く必要になります。近い将来、中国は肥料の原料の輸出国から輸入国へ転じてしまうのではないでしょうか。そうなると、日本はさらに肥料の調達が難しくなってくるわけです。

次回は、これまでご紹介してきたデータをもとに、食料の安全保障について考えていきたいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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