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H2Hマーケティング実践編 
「合理的配慮の準備できてますか?・その7:
不平等・平等・衡平・正義とは」

前回、合理的配慮の対応は、マニュアル化されたものでなく、相手の方の「サービスを享受する権利」や「人間の尊厳」を充分に理解し尊重した中で、考え・行動していくことが大切である、ということを学びました。

今回は、「サービスを享受する権利」に関連して、「不平等・平等・衡平(こうへい)・正義」の視点・考え方についてご紹介したいと思います。

以下は、「不平等・平等・衡平・正義」の違いを説明するのに、よく使われる例え話になります。

大きなオレンジの木があります。木をはさんで、南側にはAさんが、北側にはBさんが、それぞれ住んでいます。

南側は日当たりがよいため、Aさんの敷地の方には枝も長く伸び、実もたわわに実り、手を伸ばせば、すぐに実が採れる状態です。

一方、Bさんの方は、北向きなので、枝もあまり伸びず、実も少ししかついておらず、背伸びをしても実に届きません。

AさんとBさんの「不平等な状態(inequality)」を解消するには、どうしたらよいでしょうか?

一つの解決策として、“果実に手が届く” という「機会均等」を確保するために、Aさん、Bさんの両方に「踏み台」を提供するという考えがあります。

同じもの(踏み台)を提供するわけですから「平等(equality)」は確保されている、ということができます。

しかし、これでよいのでしょうか?

踏み台が提供されたことで、Bさんもなんとかオレンジに手が届くようになりましたが、収穫量はさほど多くありません。北側で、そもそも実る個数が少ないのです。一方、Aさんの方は踏み台が提供されたことで、南側に鈴なりに実っているオレンジを、より高い枝まで収穫できるようになり、二人の豊かさの差は広がる一方のようです・・・。

二人の差を縮小するにはどうしたらよいでしょうか?

「一年ごとに土地を交換する?」それもよいアイデアかもしれませんが、現実的ではありません。

現実的な施策としては、Bさんの方に「より高い踏み台」を提供する方法です。

Aさんから見ると、Bさんだけに高い踏み台が提供されるのは「不公平」に見えるかもしれませんが、北側と南側の日当たりという「元々の条件の差」を埋めていき、二人の「格差を是正」していくためには、提供する施策に差をつけていくことも必要になる場合があります。これが、「衡平(こうへい)(equity)」の考えにもとづく施策です。

公平(equality)と衡平(equity)、音は同じ「こうへい」ですが、どのような違いがあるのでしょうか?

公平とは、複数の対象者に対して同一の待遇を提供すること。一方、衡平とは、対象者ごとの前提条件の違いを踏まえながら、目的を達するため、違いに応じた異なる待遇を提供すること、となります。

最後に「正義(justice)」ですが、これは、Aさん、Bさんのもともとの条件を根本から変えることで、機会均等を実現しようとする考え方です。

例えば、収穫量が釣り合うように、二人の土地の境界線の引き方を変えるという方法です。もちろん、Aさんが納得するような理由や補償を提供する必要も出てきます。

しかし、「正義」を目指すことは大切で、その理想の状態に少しでも近づけるための現実的な施策として「衡平」の考え方による対応を模索していくことになります。

(by インディーロム 渡邉修也)

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