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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その37:
CXMで大切なのは?」

S-DLの提唱者であるバーゴとラッシュは「商品とサービス」について「知識とスキルを適用した結果生まれるオペラント資源であり、よって受益者へのサービスである」と定義しています。

コトラーのH2Hマーケティングでは、この考えを全面的に支持しており、「商品とサービス」を「顧客へのサービス」という大きな括りの中に含めています。

そしてコトラーは「重要なのは、顧客が企業や経験ネットワークに求めるコンピテンスをいかにして商品やサービスという形態に盛り込めるかである」としています。

顧客の「経験」が注目されるようになったのは、ドイツの社会学者ゲルハルト・シュルツェが、1992年の著書の中で、ニュルンベルク市の住民調査と観察に関して「基本的なニーズが満たされた後は、人々は単に『良い人生』(Schoenes Leben)から、人生を経験する(Aa Leben)を目指して努力する新しい生き方へ移行する」とし、この発見を「経験社会」という言葉に要約したこと、また、その著書が1995年に「The Experience Society」というタイトルで英訳され、マーケティング分野の研究・実践者にも影響を与えたことによります。

エクスペリエンス社会とは、商品やサービスの機能・性能・価格といった「合理的な価値」だけでなく、購入するまでの過程、使用する過程、購入後のフォローアップなどの過程における「経験」「感情的な価値」が重要になっていく、というものです。

コトラーは、ユーザーエクスペリエンス(UX)とカスタマーエクスペリエンス(CX)の2つの用語を区別して使っています。

「H2Hマーケティングでは、CXをバリュープロポジションに統合し、ユーザビリティ(使いやすさ)がUXに内包されるとの同様に、UXを商品との相互作用エクスペリエンスであるCXの一部としている」ということです。

分かりづらい言い回しですが、[バリュープロポジション] ⊃ [CX] ⊃ [UX] ⊃ [ユーザビリティ]という関係になります。

UXとCXの違いは「CXがカスタマージャーニー全体に関わることであり、あらゆるチャネルの全てのタッチポイントで得るブランドやその利害関係者との経験や感情の全てを包括的に統合したものである」ということです。

H2HマーケティングのCXM(カスタマーエクスペリエンス・マネジメント)は、「あらゆる検討事項の中心に人間を据える。顧客にインスピレーショを与えるポジティブな体験の創出を狙いとし、最終的には企業と顧客を結びつけ、ロイヤリティを生み出す」ということです。

設計したエクスペリエンスを実現するためのシンブルな概念モデルとして、コトラーは「何が」「どのように」「なぜ」の問いかけを推奨しています。

  • 何が:商品との相互作用で何ができるのか
  • どのように:相互作用の設計者の主戦場で、ある機能を美しく気持ちの良い方 法でアクセス可能にすること
  • なぜ:あるデバイス(モノやサービス)を使用する顧客の根本的な動機を反映 している

この中で、H2Hマーケティングが最も重視するのは、当然のことながら「なぜ」です。「人があるバリュープロポジションを使いたいと願う理由を探ることであり、顧客体験の多元的な顧客志向設計はバリュープロポジションに不可欠な要素となる」からです。

(by インディーロム 渡邉修也)

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