マーケティング再入門
「H2Hマーケティングとは・その35:
ペルソナ概念とは」
前回は、探索で明らかになった問題についてさらに深い洞察を得るための手法を紹介しましたが、今回はマーケティングチーム内での知見の構造化と凝縮について、引き続きコトラーのH2Hマーケティングから学んでいきたいと思います。
顧客や社会の問題に関する洞察がチーム内で共有できたら、次のステップでは、従来型の市場セグメンテーションとペルソナ概念を組み合わせることで、市場、ソリューション、ユーザーである顧客の全体像を把握していきます。
なぜ市場セグメンテーションとペルソナ概念を組み合わせるのかというと、2つの概念にはそれぞれ長所と短所があり、片方だけでは分析の際に抜け落ちてしまう観点や要素があるからです。
市場セグメンテーションは大きなユーザー集団と人口動態をベースにしながら、セグメントの規模や、そこに期待されるマーケットの金銭的な規模感を把握するのには適しています。
しかしながら、優れたセグメンテーションで適切なマーケティング施策が行われたことで販売に成功したとしても、長期間にわたってその商品がどのように使われるのかというところまではなかなか把握できません。
ペルソナ概念を加えることで、セグメンテーションだけでは抜け落ちていたパーソナルな領域まで出来るだけカバーしようというものです。
コトラーのH2Hマーケティングでは、問題解決のためのソリューションが、実際に潜在ユーザーにとって本当に有用性があるのか、デザイン思考の観察・共感などの手法を用いて見極め、さらに経済的・技術的実現可能性を合致するかどうかを検討していきます。
ユーザーにとっての有用性は “Desirability” と言われるもので 「ユーザーにとっての望ましさ」という意味での有用性になります。
経済的・技術的実現可能性は、“Feasibility” と言われ、事業者側から見た実行可能性になります。技術、資金、人材、流通など多面的に事業を評価・検討していきます。
さらには、“Viability” と言われる市場の中での事業の生存可能性も、事業化の際には検討する必要があるでしょう。これについては、マイケル・ポーターの名著「競争の戦略」や、ポーター以降の各種競争理論が参考になるかもしれません。
ユーザーにとっての有用性が確保されたら、解決すべき問題に定義されるセグメンテーションや市場の定量化を行い、ソリューションが経済的に実現可能かどうかを確認します。
コトラーは、顧客グループが選定され、それがペルソナとして共感できるように表現されたら、次のステップとして「どうすれば?」という探索の方向性を含めた帰納的な問題提起を行うべきとしています。続きは、また次回に。
(by インディーロム 渡邉修也)