マーケティング再入門
「H2Hマーケティングとは・その34:
深い洞察を得る手法とは」
前回は、未知の問題を能動的に探索する手法として、ネトノグラフィー、トレンドウォッチ、ビックデータアナリティクスを紹介しましたが、今回は探索で明らかになった問題に関してさらに深い洞察を得るための手法について。
コトラーは、人間の洞察を獲得するためには、マーケティング作業チームのメンバー間で、以下のようなステップを踏んでいく必要があるとしています。
- タスクの理解を一致させる
- 問題についての共通理解
- 深い洞察を得る
- 収集した知見や認識を結晶化する
1)については、まず問題の探索作業を開始する前に、作業メンバーへのブリーフィングを行い、監督責任者を含めたチーム内でのタスクの理解を一致させる、ということです。
2)は、探索によって得られた情報や知見を文書化し、作業メンバー間で共有し、繰り返し意見交換を行うことで、問題に関するメンバー間の共通理解を醸成していくことが大切です。
コトラーは、顧客の心情に深く共感し、その行動を理解するために有効な手法として、カスタージャーニー上の全てのタッチポイントに顧客の感情や反応、行動をマッピングするを勧めています。マッピングによって顧客の体験が可視化され、顧客体験の動きや変化を、作業メンバーで共有することが可能になります。
メンバー間で、問題に対する理解が一致しているかどうか、見解の相違があれば、他の側面について検討します。問題を抱えているのは誰なのか、それら人々が感じているニーズ・期待・感情はどんなものなのか。その問題について利害関係者が誰で、それぞれ問題に対してどのようなニーズ・期待・感情を持っているのか。問題の因果関係、文脈、フレームワークはどんなものか。政治、経済、社会、技術、環境、法制度などがどう影響しているのか等、メンバー間で、問題に対する理解を深めていきます。
3)は、エスノグラフィー、ネトノグラフィーなどの定性的探索、ビッグデータ分析などの定量的探索など、複数の方法を使い、同じ問題を抱えている人々についての深い洞察を得る段階です。
4)は、特定集団や問題の特定の側面に向け、収集した知見や認識を結晶化する段階です。作業メンバーは、収集した知見をチーム全体で発表しますが、その際にはユーザーが抱えている問題とニーズ・期待・感情について“共感的”に、他のメンバーに対して説明します。
コトラーは、発表の際に、共感マップ(エンパシーマップ)と呼ばれるものを使ってユーザーの心情や行動を図式化することで、正確な洞察とチーム内でのコンセンサスを得るのに役立つとアドバイスしています。
こうして、各メンバーから持ち寄られた情報や知見をもとに、作業チームとして取り組むべき課題を抽出していきますが、明らかになった課題・問題に対するソリューションの検討は、また次の段階の作業となります。
(by インディーロム 渡邉修也)