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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その33:
未知の問題探索に有効な手法」

H2Hマーケティングの出発点は、人間が抱えている解決すべき問題になります。企業にとって未知の問題を能動的に探索することを継続的に行っていくことで次の方向性を発見することにつなげていきます。

未知の問題探索に有効な手法として、コトラーは、ネトノグラフィー、トレンドウォッチ、ビックデータアナリティクスをあげています。

ネトノグラフィーは、マーケティング2.0の頃から分析手法として活用されているエスノグラフィーの分析手法を、オンライン上のコミュニティやトライブ構造に適用して分析する手法です。

トライブ構造というのは、ネット上では関心事や考え方が似たもの同士が集まり情報交換をしている傾向があり、エスノグラフィーにおけるトライブ(部族)のような情報構造になっていることを指します。

情報構造の例としては、そのコミュニティにおけるオピニオンリーダー的な役割を果たす人、それに追随するグループ、他のコミュニティと行き来し外部からの情報をもたらす人など、コミュニティの中での情報がどのようにやり取りされ、オピニオンがいかに形成されていくのかを観察し構造を探ることです。

ネトノグラフィーの調査は、そのコミュニティに没入することで、その中でのやり取りを肌で感じ、実際に意見交換などを行うことで、そのトライブを構成する人々の立脚点、視点、考え方、意見などを観察・把握し、さらに深い洞察を得ることを目標にしています。

トレンドウォッチは、トレンドスカウティングとも呼ばれ、初期段階のトレンドの発見を目指すものです。消費者の習慣や好みの微妙な変化を捉えたり、新しいモノの見方、考え方、行動様式を発見し、その動向をウォッチするため、かなり地道で根気のいる作業になりますが、インターネットと検索技術の進展と、オープン化された情報が増えたことで、この調査手法を実際に導入する企業も増えています。コトラーは、多様なトレンドの動きの中から、大切なトレンドを見極めるには「問いを立てる」ことが大切だとしています。

ビックデータアナリティクスの中で、コトラーが特に注目しているのはソーシャルリスニング(ソーシャルメディアモニタリング)ということです。

SNSの中で、企業やブランド、商品がどのように話題に上り、語られ、評価されているのかを観察する作業です。

ネトノグラフィーとソーシャルリスニングとの違いは、エンゲージメントと参加度合いの差になります。ネトノグラファーは、トライブやコミュニティの一員となりますが、ソーシャルリスナーは受動的で外部オブサーバーとなります。

どちらも、いきなり特定のトライブやコミュニティに限定してしまうと他が見えなくなり、偏った結果を導き出す恐れがあるため、追跡する価値のありそうなトライブやコミュニティをいくつか見定め、それらに継続参加したり継続観察していくことなります。

ここで肝心なのは、コミュニティに集まる人々を単にターゲット層として捉えるのではなく、H2Hマーケティングの基本コンセプトである全人的存在として捉えそこで語られる会話を、機能面、感情面だけでなく、なぜその人はそう思うのか、なぜそのような反応や行動をとるのかを丹念に観察すること、また、その考えや行動のベースになっている精神まで、深く洞察していくことが目標になります。

(by インディーロム 渡邉修也)

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