マーケティング再入門
「H2Hマーケティングとは・その31:
マーケティングミックスの変遷」
今回は、マーケティングミックスのフレームワークの進化について、「コトラーのH2Hマーティング」の中で紹介されていましたので、それをもとに復習していきたいと思います。
マーケティングミックスとは、1964年にニール・ボールデンが論文「マーケティングミックスの概念」の中で提唱した言葉で、マーケターについて「利益を出す事業体を作るため、マーケティングの手順や方針ミックスのクリエイティブな形成に常に従事している、成分をミックスしている人」という説明がもとになっているということです。ボールデンは、論文の中でミックスされるものを12の要素で分類していたそうです。
この12の要素を、Product, Price, Place, Promotionのシンプルは4つの変数にまとめたのがジェローム・マッカーシーで、私たちがマーケティングミックスの4P(あるいはマッカーシーの4P)と呼んでいるもので、現在でも、マーケティングの基本中の基本として使われているフレームワークです。
マッカーシーの4Pは、60年代に生まれたものなので、売り手側の視点(プロダクトアウト)に立ったものです。90年代以降のマーケットイン、つまり買い手側視点が重視されるようになると、マーケティングミックスのフレームワークにも様々な見直しが行われるようになります。
1990年にラウターボーンによって提唱された4Cでは、Customer Value(顧客価値)、Customer Cost(顧客が負担するコスト)、Communication(顧客とのコミュニケーション)、Convenience(顧客の利便性)という、買い手側の視点に変わります。
2000年代以降のデジタライゼーション時代になると、モノや情報の流れが大きく変化したことで、マーケティングミックスもさらに変化を迫られます。以下、主なフレームワークを紹介します。
SIVAモデルは、2005年にデヴとシュルツが提供したもので、Solution(ソリューション)、Information(情報)、Value(価値)、Access(アクセス)の4つの頭文字をとったもので、商品を供給するのではなくソリューションを提供する、単なる販促ではなく顧客に有益な情報を提供する、価格に固執せず価値を提供することを重視する、顧客が自社のソリューションを利用・経験したい時にいつでもどこでもアクセスできるようにする、という考え方に基づくもので、この連載の中でもたびたび紹介してきたS-DLの概念とも親和性が高いモデルです。
SAVEモデルは、2013年にエッテンソン、コンラド、ノウルズ等が提唱したもので、4Pとの対比では、Product から Solution(解決策)、Place から Access(接触)、Price から Value(価値)、Promotion から Education(教育・啓発)という関係になります。SIVAモデルと似ていますが、SIVAモデルの Information(情報)がEducation(教育・啓発)に変わっており、顧客との間の対話型の双方向コミュニケーションや教育・啓発を意識的に行っていくべきだという考え方が反映されたモデルです。
5Cモデルとは、ホールによって2017年に提唱されたもので、Communication(コミュニケーション)、Channel(チャネル)、Cost(コスト)、Customer Solution(顧客へのソリューション)、Community(コミュニティ)の5つです。コミュニティが加わっていることがポイントとなります。
そして、もう一つはファルチによって2017年に提唱された5Eモデルですが、これについては、コトラーのH2Hマーケティングの中のH2Hプロセスに関係するところが多いので、また次回に。
(by インディーロム 渡邉修也)