マーケティング再入門
「H2Hマーケティングとは・その30:
ブランド・アクティビズム時代のブランドマネジメントとは」
現代のブランディングは、顧客との対話によってブランドの価値を共創し、積極的にブランドを推奨してもらうことを目標にしています。
共創や推奨は、企業が顧客から「信用」されていることが大前提となります。
コトラーは「信用はマーケティングの究極の通貨」であるとして、H2Hマーケティングのブランドマネジメントについても、顧客が企業のオファリングに支払う通貨である「信用」、すなわち顧客ベースのブランドエクイティ(CBBE : Customer based brand equity)を管理するトラスト・マネジメント(信用管理)を重視すべきだとしています。
信用といっても顧客の価値観などによって異なります。例えば、老舗の伝統を受け継いだ商品・サービスに対する信用といったものもありますが、コトラーがH2Hマーティングの中で重視しているのがブランド・アクティビズムです。
「グリーンウォッシング」という言葉がありますが、これは企業がイメージアップのために環境配慮の見せかけのポーズを取る場合に対して、批判的な意味で使われるものです。
企業のうわべだけのCSRやSDGsの活動・スローガンに対する批判は特に若い世代に顕著であり、企業は、社会や自然環境など課題・問題点に対して、明確な立場や態度を表明し、有言実行すべきだというのがブランド・アクティビズムになります。
ブランド・アクティビズムを宣言し、それに共感・共鳴した顧客が、企業とともにブランドの価値を共創、さらに推奨していく、という連関です。
コトラーは、こうした流れを作るためのブランドマネジメントに必要なことがらについて、以下のようにまとめています。
- ブランド・パーパスは、人間が抱える問題に関連している必要がある。企業が有する問題解決能力がブランドポジショニングを確立するカギとなる。
- ブランド・パーソナリティは、利害関係者が受け取るブランド・アイデンティティを促進するものであり、人間的で情動的なものであるべき。
- ブランド・アイデンティティは、文化の変化に目を向け、変化に適応できるダイナミックなものであるべき。
- 企業は、顧客や外的影響範囲の人々とともにブランド・ミーニングを共創しなければならない。ブランド・コミュニティを確立し、ブランドマネジメントとコミュニケーションを統合すべき。
- ブランドコミュニケーションは、情報発信から対話へと進化すべき。
- 信用、経験、エンゲージメントは、ブランドマネジメントのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として継続的に管理する必要がある。
- 企業は、研究開発の別次元として、ブランドを特徴づけるデザインを確立する必要がある。
いかがでしょうか?色々あるように見えますが、コトラーのH2HマーティングやS-DL的な考え方の中では、全てが関連しており、繋がっているものになります。
(by インディーロム 渡邉修也)