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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その28:
ブランドが関与できる範囲とは」

消費者の購入プロセスは、従来、4A(認知・Aware → 態度・Attitude → 行動・Act → 再行動・Act again)と表現されてきましたが、常時接続が当たり前になったコネクティビティ時代の現在は、5A(認知・Aware →訴求・Appeal → 調査・Ask → 行動・Act → 推奨・Advocate)に変わっています。

一番大きな違いは、 マーケティング上の到達目標が、4Aの場合、行動・再行動(購入・リピート購入)であるのに対して、5Aでは「推奨」になっていることです。

たとえ購買をしてもらえなくても、ポジティブな内容でSNSでシェアしてくれたり、知人に勧めてくれたのであれば、目標を達成したということになります。

また、4Aのような一方向の流れで段階を追うごとに人数が絞り込まれていくのではなく、5Aの場合は、最初にブランドを認知した後は、訴求・調査・行動・推奨の4つをぐるぐる回遊しているようなイメージです。

評価も常に変化します。ネットでネガティブな内容の投稿を見たら評価は下がりますが、その後、信頼している人からブランドを愛用していると話しを聞いて、購入したり、さらに別の人に推奨するかもしれません。

コトラーは「(コネクティビティ時代の)ブランドマネジメントは制御ではなく、導きの活動であるべきだ」と言います。

口コミなどブランド推奨は、何かの理由やきっかけがない限り、顧客が能動的に推奨してくれることは稀ですが、コトラーは、推奨を「促す」ことは可能であり、推奨を促す主なトリガーは、「ネガティブなブランドアドボカシー」と「他者からの質問」の2つだとしています。

「ネガティブなブランドアドボカシー」の例としては、競合ブランドによるネガティブキャンペーンが行われることで、古くからのユーザーのブランドへのロイヤリティが刺激され、擁護のための推奨行動が喚起されるというものです。

また、SNSなどでの「他者からの質問」も効果がありそうです。自分が属しているコミュニティの掲示板やSNSなどで「Aブランドの購入を検討しているのですが、実際に使っている方のご意見はいかがですか?」というもの見かけたら、実際に使っている人であれば、それを選んでいるわけなので、多少批評めいた意見であっても、充分な推奨効果は発揮されると思われます。

5Aの場合、カスタマージャーニーに及ぼす影響範囲について「Oゾーン」という概念があります。「Outer(外的影響範囲)」「Other(他者による影響範囲)」「Own(顧客自身の影響範囲)」の3つです。

ブランド側で関与できるのは、外的範囲と他者からの影響範囲の一部に限定されます。

認知から推奨へ向かう流れの中で、ボトルネックが生じた場合の対策についてもコトラーは解説していますが、それはまた次回に。

(by インディーロム 渡邉修也)

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