マーケティング再入門
「H2Hマーケティングとは・その26:
ブランドアイデンティティ 4つの特性」
「(H2Hマーケティングにおける)ブランドマネジメントの成功には、あらゆるタッチポイントで顧客ニーズを満たすブランド体験を提供する、高い真実性を備えたブランドが必要となる」
コトラーは、高い真実性を備えたブランドについて「企業側が提示するブランドプロミスと実際のブランド行動(Brand behavior)が一致していなければならない」とし、以下の4つの特性を考慮したブランドマネジメントが必要だとしています。
<ブランドアイデンティティを構成する4つの特性>
- 互恵性・・・ブランドアイデンティティは、自分のブランドと他のブランドを比較して初めて育つ、他者との関係性と自己の差別化である。
- 継続性・・・ブランドを定義する本質的な特性を長期的に維持すること。
- 一貫性・・・全てのブランドタッチポイントにおけるブランドの外観と、ブランドにかかわる役員や従業員の行動における矛盾の回避。本質的なブランドの特性を継続的に首尾一貫して調整する。
- 個性・・・競合するブランドを比較して、本質的なアイデンティティの特徴が独自であること。
いかがでしょうか。4つとも当たり前のことのように思われるかもしれませんが、あらためてこれらの定義と、自社のブランドのことを照らし合わせてみることで意外なほど多くの気づきがあるのではないでしょうか。
コトラーはこれら4つに加え、H2Hブランドマネジメントでもう一つ重要なことがあると言っています。
「ブランドアイデンティティを定義する際、企業は有意義なブランド特性を考えなければならない。H2Hブランドマネジメントにおいては、ブランドと人間の問題(H2H問題)の解決策を紐付けることが、意味のあるブランドアイデンティティを生み出す最良の方法である」
G-DL時代のブランドは、「交換価値」として価値提供者である企業から、価値の受け手である消費者へ売り渡されるものであり、ブランドマネジメントも自ずと「販売」に至るまでの流れや方法を重視するものでした。
一方、S-DL時代の現在は、ブランド価値は交換価値から顧客の「使用価値」へと変化しており、顧客だけでなく企業内部の従業員も含めた多くのアクターたちが、能動的にブランド価値を共創していくものとみなされています。
ブランドマネジメントも、販売時点で終わるのではなく、顧客が商品やサービスについてどのような体験をしたのか(仮に購入してくれなくても)、まさにオープンエンドで(時間の制限なく)、あらゆるタッチポイントについて、継続して目配り、気配り、心配り(つまりマネジメント)していく必要があり、しかも、H2H問題をベースに考え対応していくことになります。
これを企業側が全部こなそうとすると気が遠くなりそうですが、企業側も共創アクターの一員だという認識のもと、真摯に行動してことがマネジメントにおける肝の部分になるのではないでしょうか。
(by インディーロム 渡邉修也)