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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その19:
アジャイル型マインドセットとCBV(顧客ベース理論)」

前回は、成長型マインドセットを紹介しましたが、もう一つアジャル型マインドセットを紹介します。

アジャイルとは「機敏な」「素早い」「頭の回転がはやい」といった意味です。ソフトウェア業界では20年程前からアジャイル型開発という開発手法が流行はじめました。従来のソフトウェア開発はウォーターフォール型と呼ばれ、最初に出来るだけ完璧な仕様書を作成したから、それに従って個々のパートを現場のプログラマーがもくもくと製作していくという手法が多かったのですが、大型コンピューターからパソコン、さらにネット時代に伴い、小さな単位で実装とテストを繰り返しながら開発を進めていくアジャイル型開発の方が、開発期間が短縮されるということで注目された手法です。

コトラーは、成長型マインドセットと、このアジャイル型マインドセットが、H2Hマーケティングの基礎となると言っています。

「成長(変化)」と「アジャイル」というキーワードをベースとしたマインドセットをもつことで、企業やそこに関係するプレイヤーたちが、常に自省し、変化と成長を繰り返すことができるようになり、その結果として、企業の業績や評価、企業文化にも反映されていくだろうということです。

コトラーは「顧客志向や市場志向が確立している企業では、マーケティングのマインドセットも確立されている」としています。

ただし、コトラーは、市場志向と資源志向は一見相反するように見えるかもしれないが、実はそうではなく単なる視点の方向性の違いに過ぎないと言います。

マーケット・ベースド・ビュー(MBV、市場ベース理論)は、必要とされる能力を、市場の観点から逆算して定義し、そこに到達するため企業に何が求められるのかを導き出す視点ですが、リソース・ベースド・ビュー(RBV、資源ベース理論)は、自社が保有するリソースによって、目標とする顧客価値に到達できるかを判断する視点であり、必ずしも矛盾しないというわけです。

コトラーは、H2Hマーケティングの本の中で、この2つの視点を統合・発展させるものとして、マッツラー、シュタール、ヒンターフーバーのカスタマー・ベースド・ビュー(CBV、顧客ベース理論)を紹介しています。

この理論は、従来のRBV、CBVの2視点に、新たにバリュー・ベースド・ビュー(VBV、価値ベース理論)を加えることで、3つの視点を統合したものです。

RBV(資源ベース)┐
         ├ + VBV(価値ベース)→ CBV(顧客ベース)
MBV(市場ベース)┘

VBVとは、株式投資家と顧客の利益を優先する視点で、企業価値と顧客価値の最大化が企業経営の重要目標となるというものです。この連載をお読みくださり、コトラーのマーケティング3.0/4.0をご理解されている方であれば、これらに加えて、従業員や取引先などをも含めたより拡張された価値と捉えることができると思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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