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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その18:
H2Hマインドセットとは」

前回までは、H2Hマーケティングに対する3つの影響因子であるデザイン思考、S-DL、デジタライゼーションについて学んできました。

コトラーは「H2Hマーケティングを推進することは、人間を目的に至る手段とみなすのではなく、中心に据えることに繋がる」とし、「3つの影響因子が人間が抱える課題の解決に向けられた時、マーケティングにどんな効果や意味をもたらすのかを示してくれる」としています。

また、コトラーは、H2Hマーケティングには3つの基本要素があり、その1つ目である「H2Hマインドセットは、規範としての性格を持ち、新しい概念の基盤を定義する」とし、「2つ目のH2Hマネジメント(戦略レベル)と3つ目のH2Hプロセス(実務レベル)の基本要件となる」と言っています。

H2Hマインドセットは、このように重要なものであり、マーケティング部門の担当者や経営層だけが備えればよいというものではなく、組織全体に深く根付かせる必要があると、コトラーは強調しています。

そもそも、マインドセットとは、どのようなものなのでしょうか?

ビジネスコーチのスヴェンヤ・ホフェルトによると、マインドセットには2つの特徴があり、「自分を取り巻く環境の見方と、自分や他者への期待を決定するフィルターとしての機能」と「フィルター機能で得た世界の認識に基づいた自分や他者への行動に影響を与える行動制御機能」ということです。

このスヴェンヤ・ホフェルトの定義を基に、コトラーはマインドセットについて、以下のような再定義をしています。

「マインドセットとは、人間の行動や非行動を引き起こす変化するロジックで、環境もその決定要因となる。特定の方法で見聞きし、理解し、感じ、分析・解釈し、伝える(あるいは伝えられない)ことに繋がる心の態度であり、そこから非行動も派生する」

コトラーは、マインドセットは必ずしも静的なものではなく、形成も修正も可能なものだとし、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授の固定型マインドセットと成長型マインドセットについて紹介しています。

固定型マインドセットは「能力は有る無しのどちらかと考えている人」に見られ、成長型マインドセットは「挑戦を楽しみ、学ぼうと努力し、新しいスキル習得の可能性を常に見出す人」に見られる、ということです。

企業にとっては成長型マインドセットを備えた従業員が多い方が有利であることは誰の目にも明らかですが、ドゥエック教授は、100%成長型というのは非現実的であり、一人の人間の中には固定型と成長型が常に同時に存在し、その比率も流動的である「マインドセットの混在性」を理解するように注意を促しています。

企業としては、このようなマインドセットの性質を十分に理解して上で、企業理念、企業文化、行動規範、教育トレーニングなどを通じて、従業員自らが自発的に成長型マインドセットへと変わっていけるように、メッセージを発信し、変化・挑戦を支援していくことになります。

(by インディーロム 渡邉修也)

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