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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その13:
アクターが生み出す生態系(サービスエコシステム)」

前回、前々回とS-DLの11の基本的前提を見てきましたが、最後のFP11は「価値共創は、アクターが生み出した制度と、制度の取り決めを通じて調整される」というものでした。今回は、この制度(institution)について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

バーゴとラッシュは「S-DLは『共通の制度的取り決めとサービス交換を通じた相互的な価値創造によって結びつけられた資源統合アクターからなる相対的に自己完結的かつ自己調整的なシステム』と定義されるサービスエコシステムの観点を採用する」としています。

相互的、相対的、自己完結的などの用語が散りばめられ、なにやら呪文のような文章ですが、バーゴとラッシュは「生物界の生態系(エコシステム)のように、サービスエコシステムも、局所的な問題を解決するためにサービスを交換するアクター同士の相互作用の結果として生まれる。有益な交換が繰り返されると、システム構造が出来上がる。自己完結型のエコシステムは、アクターの適応や反応に応じて形成されるが、自己調整のプロセスでその形は常に変わる」と説明しています。

分かりやすい例えとして、「家族は固有の資源統合アクターで形成されたサービスエコシステムだが、同時に、近隣住民や国など他のエコシステムの一部でもある」という家族の例をあげています。

サービスエコシステムだけでなく、制度(institution)について理解する場合にも、この家族の例えが分かりやすいと思います。個々人や、1つ1つの家族は、それぞれ自らの意思で、自分がやりたいように振る舞い、日々の生活や人生を送っているように見えますが、実際にはその国や自治体など社会の明文化された制度や土地や家族の慣習やしきたりのような暗黙のルールの影響下にあり、さらに、国際関係や地球規模の環境の変化に影響を受けているという事実は、多くの人にもイメージしやすいと思います。

従来のG-DLの発想では、生産者から消費者という一方向的にものごとを捉える傾向がありましたが、S-DLの場合は、サービスを中心に共創アクターが多様な振る舞いをする生態系(サービスエコシステム)であるわけです。

S-DLの協働システムやネットワーク型の思考を支えているのは、インターネットによって各アクターがリアルタイムで繋がる「接続性」の高まりです。

バーゴとラッシュは「接続性とは、単なる資源、人、商品の流れの接続性だけではなく、サービスとサービスの交換である」とし、「エコシステムという捉え方は、現実のより正確な姿を提示してくれる。大事なのは繋がりや結びつきだけでなく『アクター間の交流や交換』であり、エコシステムという視点はその姿をより的確に描いてみせるのだ」としています。

さらに、バーゴとラッシュは「サービスエコシステムには、アクター間の活動を調整し、効果的に機能させるための共通の制度(ルール)が必要である」と主張していますが、これについては、また次回に。

(by インディーロム 渡邉修也)

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