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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その5:
デザイン思考の共感と問題定義」

デザイン思考の一連のプロセスの入口となる「共感」するためには、「観察」「会話」「見て聞く」といった手法が用いられます。

観察とは、対象者(ユーザーなど)が、製品・サービスを使用する際の行動や態度などを、実際の生活・作業環境の中で直接観察させてもらうことです。

重視されるのは、対象者の発言と行動・態度で矛盾するところ、対象者が避けていること、手こずっていることなどに着目し注意深く観察することです。対象者が自覚している/していないに関わらず観察の中で拾っていきます。

会話とは、対象者へのインタビューです。質問項目はあらかじめ用意しておきますが、必ずしも項目を全て網羅する必要はなく、会話の中で話題がそれたとしても、それが対象者の語りたいことであるならば、そこに本音が含まれていることもあります。話しの腰を折らないように注意しつつ「なぜ」と問いかけることで、対象者の行動や思考の深い意味を掘り起こしていきます。

見て聞くとは、実際に作業をしてもらいながら、各作業ステップごとに、作業方法や作業の様子を詳細に観察・確認しながら、対象者が作業中に頭の中で何を考えているのか声に出してもらいます。声に出してもらうことで、作業中の思考や気分を“見える化”していくわけです。さらに思考や気分について、なぜそう考えたのか、なぜそのような気分になったのかを、会話によって深掘りしていきます。

以上が「共感」の主な手法となります。これらを丹念にやれば、相当な量と質の情報が得られ、対象者の心理や本音に近づくことができると思われます。

デザイン思考の次のプロセスは「問題定義」です。「共感」で得られた情報は多様で豊かかもしれませんが、未整理の状態のままでは正しい解決策を導き出すことは難しいでしょう。

得られた情報を分析することで、本当は何を望んでいるのか、場合によってはユーザー自身も気がついていない(言語化されていない)潜在的な想いや課題を深掘りし意味づけをしていくことで、真のユーザーニーズを抽出していきます。

問題定義段階のゴールは、意味があり行動を起こせる問題定義文をつくることです。ポイント・オブ・ビュー(着眼点)と呼ばれる、「ユーザー」の行動や言葉に加え、言語化されない潜在下の「インサイト」を考えながら、真の「ニーズ」とは何か、問題定義文として表現していきます。

問題定義文は、多くのユーザーのニーズを満たすようなものよりも、個別的具体的な着眼点から導き出された問題定義文がよいとされています。

総花的で万人受けするものよりも、焦点が絞り込まれエッジの利いた着眼点の方が、開発チームのメンバーを刺激しアイデア創出を促す力になります。

良質な問題定義は、正しい解決策の方向性を照らし、イノベーションを生み出す起点となります。

次回は、デザイン思考の3番目のプロセスである「概念化」を見ていきたいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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