マーケティング再入門
「H2Hマーケティングとは・その4:
デザイン思考の5つのプロセス」
「デザイン思考とは、生活のあらゆる場面に起こる複雑な問題を解決するための、人間中心の体系的アプローチである。このアプローチは、形やレイアウトなどの従来の視点を遙かに超える。技術的な解決可能性の観点からタスクに対峙する従来型の科学的、工学的アプローチとは異なり、ユーザーのニーズや要件、ユーザーの志向性がそのプロセスの中核となる」(ハッソ・プラットナー・インスティテュート・アカデミーによる「デザイン思考」の説明)
「デザイン思考」で重要視されるのは、ユーザーのニーズと志向性です。以下のような5つのプロセスを通して、ユーザーのニーズと志向性がどのようなものなのか、その本質に迫るために入念な観察を行い、それをもとに課題・問題点を明らかにし、アイディアを考え、プロトタイプとテストを繰り返すことで、イノベーションにつなげていこうとするものです。
- 共感(Empathize)
- 問題定義(Define)
- 概念化(Ideate)
- 試作(Prototype)
- テスト(Test)
これら5つのプロセスは、必ずしも順番に行う必要はなく、同時並行でも、行きつ戻りつしても構わないそうで、あくまでも包括的に捉えることが重要だということです。
まずは「共感」から見ていきたいと思いますが、そもぞもなぜ共感からスタートするのでしょうか?
従来の製品・サービスの開発では、その会社が保有する技術・ノウハウなどのリソースと、市場調査、ユーザー調査を掛け合わせることで、仮説を設定・検証し、新製品・サービスを開発するという「仮説検証型」のアプローチが主流でした。
しかし、スタート地点が自社のリソースや、既存のものへの具体的な不満や改善要望だったりする時点で、「そもそも、それは本当にユーザーが望んでいるものなのだろうか?」という本質的な問いが生じます。
「デザイン思考」では、その核心に迫るために、ユーザーを理解し、彼らの生活に関心を持つこと、さらにはユーザーの視点・立場に立って「共感する」ことが必要だと考えられています。
具体的には、ユーザーと直接関わり、インタビューを行い、利用シーンや言動を観察したりすることにより、ユーザーが何に共感しているのか、本当に求めているものは何かを見つけ出していく作業になります。
ここで注意すべきことは、ユーザーの言動を単純に鵜呑みにしないことです。ユーザー自身も既存の枠組みの中で、ものごとを捉え評価しているため、心の奥底にある本音とは異なる言動を取っている可能性もあります。心の機微までしっかりと観察していかないと、真の「共感」とは言えません。
インサイト(洞察)という言葉がありますが、デザイン思考が重視しているのは、対象者(ユーザー)の言動の裏側にある感情や思い込み、生活習慣、行動原理などにまで踏み込んだ、深い観察と共感となります。
次回は、「共感」についての具体的な手法をみていきたいと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)