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マーケティング再入門 
「H2Hマーケティングとは・その1:
H2Hマーケティング の概要」

今回から、コトラーの日本における最新刊である「コトラーのH2Hマーケティング 『人間中心マーケティング』の理論と実践」(フィリップ・コトラー/ヴァルデマール・ファルチ/ウーヴェ・シュポンホルツ)から、H2Hマーケティングとは何かを学んで行こうと思います。

H2Hとは「ヒューマン・トゥ・ヒューマン」で、マーケティング3.0/4.0/5.0といった現在進行形のマーケティングの理論と実践を踏まえつつ、非倫理的マーケティングへの反省と脱却を目指すものです。

コトラーの諸作を読み、実践されてこられた方々にとっては「顧客から人間」「モノから経験」「提供から協働・共創」というキーワードは、もはや当たり前のことと感じられるかもしれませんが、この本では、そうした考えや手法をつまみ食い的に採り入れるだけでは不十分であり、企業全体のマインドセットから根本的に見直し再構築していかなければその企業に未来はない、という強い主張になっています。

詳細は次回以降紹介していきますが、その徹底ぶりが垣間見えるキーワードをいくつか拾ってみます。

  • 企業はもはや “価値の創造者” ではなく、“価値共創の協働アクター” となる。
  • グッズ・ドミナント・ロジック(G-DL)から、サービス・ドミナント・ロジック (S-DL)へ。
  • S-DL企業が提供するのは「経験の機会のみ」であり、価値のある経験を“生み出す” ことはできない。

  • FoE(Firms of Endearment, 愛される企業)とは、どの利害関係者集団も他の集団を犠牲にしてメリットを得ることのない、自他双方が繁栄する集団。
  • 従来の株主優先ではなく、360度ステークホルダー(またはSPICEステークホルダー)であるべき。(※SPICE:社会 Society, パートナー Partner, 投資家 Investor, 顧客 Customer, 従業員 Employee)

  • 持続可能性には、エゴイズムを抑え、人類中心から生物中心へのパラダイムシフトが必要となる。
  • マーケティングは、超消費を促し、現実を「見て見ぬふり」な人々を利用しているという意味で、そこに加担している。
  • 生活者の生活や行動に強引に割り込むネット広告などのインタラプション・マーケティングから、相手の許可を得た上で行う協業的な柔らかいパーミッション・マーケティングであるべき。

若干抽象的な表現もありますが、企業はモノを作って提供するという一方的な価値創造者(提供者)でなく、生活者と協働して価値を共創していくための場を用意する協働アクターである、というマインドセットへの転換が必須であること、そこから企業活動の全領域を見直し再構築を求めているということは感じ取れると思います。

次回は、H2Hマーケティングモデルの基本的な概念について学んでいきたいと思います。

(by インディーロム 渡邉修也)

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