マーケティング再入門 
「制度主義とは何か・その19」

「新古典派理論」は、1870年代にジェボンズ、メンガー、ワルラスらによって提唱・確立され、マーシャルによって広く世界の学界に普及された、現在に続く近代経済学のベースとなっているものです。

この新古典派理論に対して、当時、いち早く理論的、体系的にはじめて批判を行い、それに代わるべき経済学の方向性を提示したのがヴェブレンです。

まず、新古典派理論とはどのような理論前提をもつものなのでしょうか。宇沢の解説によると下記にようにまとめられます。

<新古典派理論の理論前提>

  • 生産手段の私有制
  • 経済人(ホモ・エコノミクス)の概念
  • 主観的価値基準の独立性・不変性
  • 生産手段の可塑性(マリアビリティ)
  • 市場均衡の安定性

ヴェブレンは、まずは1898〜1900年にかけて発表された2つの論文(「経済学の諸前提について」、「経済学は進化論的科学たりうるか」)の中で、新古典派理論の理論前提について、その非現実性を指摘します。

また、1898年に発表したヴェブレンの代表作の1つ「有閑階級の理論」では、経済人(ホモ・エコノミクス)の合理的行動仮説について、人々の経済活動、とくに消費行動は、新古典派理論が主張するベンサム的な効用を最大化するということでは説明できず、ホモ・エコノミクスという概念自体が、人間行動の本質から大きく乖離したものであると主張しました。

続いて、1904年に刊行された「営利企業の理論」では、新古典派理論への批判にとどまらず、経済循環、恐慌発生、長期停滞に関する独自の理論を展開しています。

ヴェブレンの考え方を理解するうえで必要だと思われますので、少々長くなりますが「営利企業の理論」の内容について、宇沢の解説をもとに少し詳しく紹介していきたいと思います。

まずは、新古典派理論の理論前提である生産手段の可塑性(マリアビリティ)に対するヴェブレンの主張を紹介したいと思いますが、その前に「生産手段の可塑性(マリアビリティ)」って何?という方もいらっしゃると思いますので、宇沢の解説を紹介させていただきます。

「新古典派の理論前提について、つぎにあげなければならないのは、生産手段の可塑性(マリアビリティ)あるは可変性の仮定である。ある生産要素が可塑的であるというのは、その生産要素が特定の用途に固定されることなく、そのときどきの条件に対応して、一つの用途から他の用途に自由に転用することが可能であって、そのためにとくに費用をかけることもなく、また時間も必要としないようなときを指す。」

生産要素が「特定の用途に固定されることなく」「他の用途に自由に転用可能」というのは、現代の私たちからはイメージしづらいかもしれませんが、大雑把に例えると、職工さんに「Aの現場はもう人が足りてるから、明日からBの現場へ行ってね」と自在に差配できて、しかも、職工さんたちはそれに対して何も異を唱えない、という前近代的な生産をイメージしているものと思われます。これに対するヴェブレンの指摘については次回に。

(by インディーロム 渡邉修也)

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