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マーケティング再入門 
「宇沢弘文『社会的共通資本』を読む・その16:
マルサス、リカードの古典派経済学」

経済学の始祖スミスと、ミルとの間の世代にはリカード、マルサスという古典経済学の基礎固めをした二人がいます。その後の経済学に特に大きな影響を与えたのはデイヴィッド・リカードです。

スミスは「生産力の上昇が、地主・資本家・労働者の三大階級の間に予定調和的に分配される」としていましたが、リカードは、ナポレオン戦争時の貿易の実態から「予定調和的な分配ではなく、利潤を追求する市場における競争的な条件によって分配のされ方も変わる」としました。

宇沢の解説によると、経済学におけるリカードの功績は「各財の価値が、その生産のために直接、間接に投下された労働の相対的量に依存するという労働価値説に厳密な基礎づけを与えたこと」、「分配の問題が資本蓄積、経済発展の段階によってどのように変化してゆくのかということを理論的に解明したこと」、そして外国貿易における「リカードの比較生産費説」ということです。

比較生産費説は、2国間で貿易を行う時に、財を生産するのに、どれだけの労働者が必要か(つまり生産コスト)を、2国間で比較していけば、どの財を輸出し輸入すればよいのか自ずと決まってくるとし、さらに関税をかけない自由貿易が実現されれば、両国とも利益を得ることができるはずだというもので、現代の新自由主義やグローバル資本主義にも引き継がれている考え方です。

宇沢によると、リカードは理論的な帰結として「利潤率が長期的には低下する趨勢をもつ」という命題を導き出し、以下のように主張したそうです。

「経済発展の原動力である資本蓄積がつづいてゆくと、土地は相対的に希少となり、地代は上昇するのに反して、利潤率は低下する傾向をもつ。そのとき、資本蓄積の速度は低くなって、経済発展のプロセスは停滞してしまうと考えた。他方、労働者の受け取る賃金は食料価格に比して、一定の水準に抑えられたままである。土地保有にかんする封建的遺制が残っているかぎり、経済発展も望めないし、また、労働者階級の生活水準の向上ももたらされないであろう。」

この状態は「定常状態」とも言われ、経済が停滞している状態を示しているわけで、リカード自身も、リカード以降の経済学者もこの定常状態を回避するにはどうしたらよいのか、ということに腐心してきました。

それに対して、「定常状態」は条件さえ整えば、そんなに悪いものではない、という考え方を提示したのが、ジョン・スチュアート・ミルの「経済学原理」の中の「On Stationary States(定常状態について)」という論考でした。

宇沢の解説によると、「新しい製品がつぎつぎに創り出され、文化的活動が活発に行われながら、すべての市民の人間的尊厳が保たれ、その魂の自立が保たれ、市民的権利が最大限に保証されているような社会が持続的(sustainable)に維持されている。このようなリベラリズムの理念に適ったstationary stateを古典派経済学は分析の対象としたのだとミルは考えた」ということです。

また、「国民所得、消費、投資、物価水準などというマクロ的諸変数が一定に保たれながら、ミクロ的にみたとき、華やかな人間的活動が展開されているとというミルのstationary stateは果たして現実に実現可能であろうか」とし、「この設問に答えのが、ソースティン・ヴェブレンの制度主義経済学である」としています。次回は、ミルのstationary stateの考え方が、ヴェブレンにどのように引き継がれていったのかを、宇沢の解説でみていきます。

(by インディーロム 渡邉修也)

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