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マーケティング再入門 
「宇沢弘文『社会的共通資本』を読む・その3:
社会的共通資本の概要」

過去150年、200年のスパンで見た場合、中央集権的な計画経済を特徴とする社会主義が失敗に終わったことは周知のことですが、分権的市場経済を特徴とする資本主義もまた問題があることは多くの人が感じるところでしょう。

『分権的市場経済のパフォーマンスもまた矛盾に満ちたものであった。(中略)利潤動機が常に、倫理的、社会的、自然的制約条件を超克して、全体として社会の非倫理化を極端に推し進めていったからである。と同時に、投機的動機が生産的動機を支配して、さまざまな社会的、倫理的規制を無効にしてしまう傾向がつよくみられるようになったきた。』(宇沢弘文「社会的共通資本」)

宇沢は、市民的自由が最大限に保証され、人間的尊厳と職業的倫理が守られ、しかも安定的かつ調和的な経済発展を実現するには、ソースティン・ヴェブレンの制度主義(Institutionalism)の考え方を採り入れるべきとし、「制度主義の経済制度を特徴づけるのは、社会的共通資本(Social Overhead Capital)と、さまざまの社会的共通資本を管理する社会的組織のあり方とである」としています。

社会的共通資本の管理については、「制度主義のもとでは、生産、流通、消費の過程で制約的となるような希少資源は、社会的共通資本と私的資本との二つに分類される」とし、「(私有ないしは私的管理が認められていたとしても)社会全体にとって共通の財産として、社会的な基準にしたがって管理、運営される」としています。

社会的共通資本の管理で、さらに重要なことは、「社会的共通資本は、それぞれの分野における職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、職業的規律にしたがって管理、運営される」ということです。

宇沢は。この管理、運営は「決して、政府によって規定された基準ないしはルール、あるいは市場的基準にしたがっておこなわれるものではない」ということ、さらに、『このように「大切な」資産を預かって、その管理を委ねられとき、それは、たんなる委託行為を超えて、フィデュシアリーな性格をもち」、「社会的共通資本の管理を委ねられた機構は、あくまででも独立で、自立的な立場に立って、専門的知見にもとづき、職業的規律にしたがって行動し、市民に対して直接的に管理責任を負うものでなければならない」としています。(※注:フィデュシアリー(fiduciary、受託者))

一方、政府の役割については、「政府の経済的機能は、さまざまな種類の社会的共通資本の管理、運営がフィデュシアリーの原則に忠実におこなわれているかどうかを監理し、それらの間の財務的バランスを保つことができるようにするもの」としています。

また、すべての国民が「その所得、居住地などの如何にかかわらず、市民の基本的権利を充足することができるようになっているかどうかを監視するものでなければならない」としています。

(by インディーロム 渡邉修也)

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