マーケティング再入門
「宇沢弘文『社会的共通資本』を読む・その1:
なぜ今この本なのなのか」
この連載「マーケティング再入門」は、弊社のようなスモールカンパニーが時代の大きなうねりの中で生き残っていくためのヒントを、マーケティングの大家であるコトラーの著作を中心に復習し、そこから得られたことや考えたことを書き連ねたものです。
連載を始めた2014年当時の問題認識としては、
- 2020年の崖(オリンピック後の景気の落ち込みをいかに乗り切るか)
- 2025年問題(団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる)
- 2030年問題(日本の人口の3分の1が65歳以上の高齢者になる)
- 2050年問題(日本の人口が1億人を割り込み回復が困難に)
以上に対処する事業戦略はどうあるべきか、こうした問題をソフト・ランディングさせるために弊社としてできることはないのか、といったことです。
世界的な課題としては、シンギュラリティ(人工知能の能力が人類を超える)、グローバル資本主義の行き詰まり、新興国の人口増加、地球温暖化が赤信号になったこと。これらに対処するためのSDGs的な発想と対策などでしょうか。
また、今回のコロナでは、医療や生活の保障、グローバルなサプライチェーンのリスク、生命と経済のどちらを優先するのか等、様々な問題が浮き彫りにされました。
また、コロナによって、上記の諸問題について、日本も世界も時計の針の速度が一層早回しになり、待ったなしの状態になったと思われます。
コトラーは、昨年パンデミックが顕著になった時点で、これまでのやり方を継続するか、新しいことはじめるか、後者しかあり得ないと訴えました。
社会はどのように変わっていくべきなのか、マーケティングの本筋から少しそれますが、企業活動の舞台となる社会の在り方について考えることは、これから起こるであろう大きなうねりの中で、企業がどのように考え、行動していくべきなのか、なんらかのヒントを与えてくれると思います。今回から数回に分けて、今後の社会の在り方について、少し考えていきたいと思います。
では、「どこから手を付けるべきか?」ということですが、昨年後半、この連載の「アフターコロナのマーケティング」シリーズの中で、自分なりにキーワードとして残ったのは、「社会的包摂」「人間中心のマーケティング」「協働・共創」といったものでした。
これらのキーワードを発展させる何かよい本はないかと探したところ、よい本が見つかりました。宇沢弘文の「社会的共通資本」(岩波新書)です。
この本は、2000年11月に出た本で、その後、宇沢氏が2014年に亡くなっているため、現在の状況について考察した最新の本ではないのですが、社会にとって何が大切なことで、それを確保していくためには、どのような考えに基づいていくべきかが、簡潔かつ明解に書かれており、上記のような多くの問題を抱えている現在そして今後に関しても何らかの示唆を与えてくれるものだと考えられます。次回から数回に分けて、宇沢弘文の「社会的共通資本」から学んだことを書いていきたいと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)