マーケティング再入門
「アフター・コロナへ向けたマーケティング・その13:
エンゲージメントを強固にし、CLV、CRVを高める」
前回は、「調査(A3)」から「行動(≒購買)(A4)」を復習しましたが、コトラーは、売買の成立は、より大きな実りをもたらす「リレーションシップの出発点」であると言います。
「A5モデル」の最終的な到達目標は、「A5(推奨)」です。
コトラーは、顧客から「A5(推奨)」を得るようになるには、「親近感を高める」ことが大切だと言っています。では、どういった時に「親近感」が高まるのでしょうか?
コトラーは、購入後の経験(製品の品質、使用感、アフターサービスなど)が、ブランド側が購入前に主張していたものと一致またはそれを上回った時に、顧客の親近感が高まり、さらにその状態が継続することで、忠実な推奨者になってくれる可能性が出てくるとしています。
「購入前の期待 ≦ 購入後の経験 ⇒ 親近感の高まり ⇒ 親近感の連鎖 ⇒ 忠実な推奨者」 という流れです。
親近感の連鎖のためには、製品やサービスから得られる満足感の連鎖がもっとも重要であることはもちろんですが、コトラーは、購入後経験を高めるには、ブランドと顧客とのタッチポイントを意図的に拡充していく必要性にも言及しています。
「ブランドが人間らしさを持つようになるにつれて、顧客エンゲージメントが真に重要になっている。」
企業と顧客との壁を打ち破り、友人としての両者のインタラクション(相互作用)を可能にするような取り組み(=仕組み作り)をしていくべき、ということです。
インタラクションをもたらすものはいろいろありますが、人と人との触れ合いや温もりが感じられるようなハイタッチ・エンゲージメント(※ヒューマンタッチ・エンゲージメントという言い方も)が最も分かりやすくもので、さまざな記事でよく紹介されているリッツ・カールトンの考え方や現場での徹底ぶりはその典型例になります。
コトラーは、ハイタッチのほかにも、デジタル時代のインタラクションの在り方にはいろいろな可能性があるとし、AIなどを活用したハイテク・エンゲージメント、ソーシャルメディアを利用したインタラクション、ゲーミフィケーションを利用したコミュニケーションなどをあげています。
いずれにしても、顧客が製品やサービスを購買してくれた時点はゴールではなく、顧客との長い関係の出発点であり、いかにエンゲージメントを親密で強固なものにしていくことができるかが、CLV(Customer Lifetime Value:顧客生涯価値)や、CRV(Customer Referral Value:顧客紹介価値)につながっていくことになります。
(by インディーロム 渡邉修也)