マーケティング再入門
「アフター・コロナへ向けたマーケティング・その3:
CtoBビジネスを定義する」
「ニューノーマル」とはどのようなものであるべきなのか。コトラーの最新作である「リテール4.0」を手掛かりにしながら、探っていきたいと思います。
「リテール」の定義について、コトラーの「リテール4.0」では、「本書において『リテーラー』とは、潜在顧客/最終消費者と商業上の関係─直接または間接的に─を有するすべての人」とされています。
最初に、"本書において" とあるように、一般的な英語の翻訳とは異なるので注意が必要です。特に注目すべきなのは、最後に "すべての人" とされているところです。
コトラーは「BtoB、BtoCは、やがて H2H(人間対人間)という、より広い概念の中に溶け込んでしまうだろう」としています。
これはどういうことでしょうか?
コトラーは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に起因する主な2つの現象として、「民主化」と「中抜き現象」をあげています。
「民主化」とは、DXによって、コストの低下と技術使用の簡易化が進むことで、広範な層の人びとがコンテンツ、情報、財・サービスにアクセスできるようになり、さらに生成までできるようなる、ということです。
「中抜き現象」とは、DXによって、流通段階における伝統的な仲介を経ずに、見込みの購入者に直接到達するケースが増え、今後もその傾向は続くということです。
情報の流れが、一方通行から双方向になったことで、消費者は「対話する相手の役割」を獲得し、さらに「共創・協働」する関係へと変わっています。
現在、世界人口77億人のうち、約30億の人々がスマートフォンを持ち歩き、何らかのSNSを利用していると言われます。これは、先進国おいては経済活動に従事する多くの人々が、"ほぼ即時" の「コンタクト性」と「リアルタイム性」の中で生活しているということになります。
BtoBの取引をした直後に、BtoCの通販サイトで買い物をし、さらにその直後に、メルカリのようなフリーマーケットサイトでCtoCの取引をする、といったことが、多くの人々にとって当たり前の日常になっています。
このような日常を生きる人々が、BtoBだからといって旧態依然とした商慣習をずっと続けるとは考えにくく(既にBtoBの企業であっても、エンドユーザーと直接コンタクトをとる機会は増加しており)、現在、リアルな小売店舗やECサイトなどを仲介して販売されているものの中にも、仲介を必要としなくなるものも増えていくと予測しています。
コトラーは、リテール4.0を導入するための理想的なアプローチとして、「ビジネスの相手との対話を上手に進めながら、それを基に、データの加工とプロセスの再構築を並行して行うこと」とし、これを続けていく先に、「顧客から企業へ、すなわちCtoBのビジネスを定義する段階に到達する」としています。
次回も、コトラーの「リテール4.0」を手掛かりにしながら、これからの時代に必要なマーケティングの考え方を探って行きたいと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)