マーケティング再入門
「アフター・コロナへ向けたマーケティング・その2:
リテール4.0における10の法則」
今回のコロナ・パンデミックに際して、コトラーは「多くの人が元の生活に戻りたいと思っているが、よく考えると、これまでの世界は多くの人は貧しく腹をすかせ、働き過ぎてもいた」、「今回のコロナを契機にいろいろなことを変えていくことで」、「多くの人びとが充足した生活のための機会を得られる『ニューノーマル』をつくるべきだ」というメッセージを発しています。
同じメッセージの中でコトラーは、この局面において経営者には3つの選択肢があり、(1) 従来のやり方を継続する、(2) 新しい戦略へ移行する、(3) 経営をあきらめる、として「新しい戦略へ移行」するしか道がないとしています。実際その通りだと思います。
「ニューノーマル」とは、どのような方向へ移行することなのでしょうか。
キーワードはいくつかありますが、1つ目は「DX」という略される「デジタルトランスフォーメーション」です。大雑把に言えば、最新のデジタル技術を応用して、これからの時代に対応するための変革していこう、ということです。
DXそのものは、10年くらい前から提唱されてきたのですが、前例踏襲で変化を好まない日本においては、リモートワークなどもなかなか進まなかったのですが、今回のコロナで容赦なく導入されました。
しかし、コトラーが言っているのは、もちろん仕方なく変化することではありません。未来へ向けた戦略として、新しいことに取り組んでいこうということです。
コトラーは、最新作「コトラーのリテール4.0」の中で、「DXがリテール(小売)のルールを激変させる」とし、「細分化された購買プロセスの中で、リアル店舗の役割を再定義していく必要がある」としています。
この本は題名の通り、DX時代のリテール(小売)の在り方について論じたものです。
コロナ以前に書かれたものなので、アフターコロナ、ウィズコロナ時代のリテールの在り方やマーケティング、経営のことを論じたものではありませんが、あくまで切り口がリテールなだけで、多くの業種業態、職種にとっても参考になるものだと思われますし、これからの時代に必要なことが提示されていると考えられます。
この本の中で提唱されているが「リテール4.0における10の法則」というものです。(1) 不可視であれ、(2) シームレスであれ、(3) 目的地であれ、(4) 誠実であれ、(5) パーソナルであれ、(6) キュレーターであれ、(7) 人間的であれ、(8) バウンドレスであれ、(9) エクスポネンシャルであれ、(10) 勇敢であれ、というものです。
これまでコトラーの諸作、取り分け、リーマンショック以降のマーケティング3.0及び4.0関連の諸作を読んでいる方には、これらのキーワードを見ただけで、だいたい言わんとしていることは察しがつくかもしれません。
次回は「リテール4.0」の中で語られていることを紹介しつつ、これからの時代の顧客との接点の持ち方や、企業の取り組みの方向性について検討していきたいと思います。
(by インディーロム 渡邉修也)