マーケティング再入門
「新興国マーケティングから日本を考えてみる・その4:
低所得消費者 4つのセグメント」
低所得消費者といっても、実際にはいろいろな人がいて、一括りにすることは出来ず、それぞれにマッチにしたマーケティング・ミックスが必要になります。
「コトラーのマーケティング3.0」の中では、SBE(ソーシャル・ビジネス・エンタープライズ)において、低所得消費者を次のような4つのセグメントに分類し、マーケティング・ミックスを検討できるとしています。
1)ビリーバー(信念の人)
伝統的な道徳的価値観を強く信じている保守的な消費者。家族やコミュニティを愛している。常になじみのブランドを選ぶため、消費パターンは予測しやすい。特定ブランドへのロイヤルティが高い。
2)ストライバー(努力する人)
社会的承認を動機として行動する。仲間を感服させるために達成を追い求める。見せびらかせる製品を選び、豊かな人の持ち物をまねる。達成志向であるが、資力不足のために前進を阻まれる。
3)メーカー(つくる人)
具体的な活動を通じて自己を表現することを好む。実務的なスキルで住宅や農場をつくる。実利的・機能的な製品を好み、感情的価値には感動しない。
4)サバイバー(生存する人)
物質的資源が4つのセグメントの中で最も少ないため、願望の実現より基本的欲求の充足を重視する。常にお買い得品を探す慎重な消費者。
いかがでしょうか?これらは、これから上を目指そうという途上国における分類なので、現在の日本には、そのまま適用することはできませんが、もともとマーケティングのデータ分析などで利用されているVALS(Value And Lifestyle)をベースにコトラーが調整したものなので、日本のデータを分析する際にも参考にはなると思います。
日本の場合だと、現時点ではある程度の可処分所得や財産を持っていて、一見すると中流的な生活水準を保っているものの、将来不安から消費を抑えがちの人が多いように思わますので、「将来不安の人」(※今思いついた用語なので一般的な用語ではありません)という分類が必要だと思いますし、「現実から目を背ける人」、「希望を捨てない人」、「外に活路を求める人」なんていう切り口もあると思います。
コトラーは、SBEの話しの中で、時と場所により、マーケティング・ミックスのすべての要素を再設計する必要があると言っています。
高齢者の割合が増え、人口が減少していく日本、グローバルの大きな流れの中にある日本という条件の中では、これまでのマーケティングで用いられてきた各種の分類や、それに基づくマーケティング手法も、抜本的に見直していく必要があります。
思えば「マーケティング」という言葉は、供給側の視点ではなく、マーケットや消費者の視点・立場からものごとを捉え直そうという運動でもあるわけですから、時代や状況に合わせて変化していくことは至極当然なことでもあるわけです。
(by インディーロム 渡邉修也)