マーケティング再入門
「3.0/4.0における社内マーケティング・その3:
社員の6つのセグメント分類」
コトラーは「マーケティング3.0とは、社員を変えることであり、社員に力を与えて、他の人びとを変えさせる」ように促すことだと言っています。
では、社員に対して、共有価値を定着・浸透させ、行動へと促していくには、どうしたらよいでしょうか。
コトラーは、マーケティング3.0はトレーニングやコーチングを超えたものであるということを、まずは経営者自身が理解する必要があると言います。つまり、マニュアルを作成し一方的に教え込むようなものではないということです。
第一に「企業は価値を弱める恐れがある現在の慣行を見直す」必要があります。
マーケティング3.0を導入しようとする際には、恐らく、社員の多くはそれまでの社内外の慣行とのズレを感じ違和感を持つはずです。まずは、経営者自身が率先して慣行の見直しを行い、行動として示す必要があります。
第二に「企業は行動を直接、価値に結びつける仕組みをつくる」必要があります。
社員に力を与え、個々の社員が自発的・積極的に関与し、他の人びとや世の中に対して変化をもたらすためのプラットフォーム(基盤)をつくるということです。
ただし、社員の個性や思惑は個々異なります。それぞれの個性に応じて、適切な活躍の場を提供する必要があります。
コトラーは「マーケティング3.0」の中で、エリクソン、ダイクウォルト、モリソンによる社員を6つのセグメントに分類する研究を紹介しています。
<社員の6つのセグメント分類>
- 楽して稼ぎたがるセグメント(手軽な成功を求める)
- 柔軟なわき役のセグメント(まだ仕事を優先事項とはみなしていないため、流れにに身を任せる)
- リスクと報酬を求めるセグメント(仕事を挑戦の機会とみなし、自らを奮い立たせる)
- 個人の専門技能を生かしてチームとして成功したいと考えるセグメント(チームワークとコラボレーションを与えてくれる仕事を求める)
- 確実な前進をめざすセグメント(前途有望なキャリアパスを求める)
- 目に見える足跡を残したがるセグメント(会社に永続的な影響を与える機会を求める)
ただし、単に社員を分類しただけでは意味がありません。重要なのは「組織のシグニチャー・エクスペリエンス(その組織で働くことでしか得られないような経験)」を提供できるかどうかです。
働く人たちのセグメントを理解した上で、社員にとって、協働的、文化的、創造的なシグニチャー・エクスペリエンスをもたらすような基盤を構築していくのが経営者の務めでもあるわけです。
(by インディーロム 渡邉修也)